
丸井グループのクレジットカード会社であるエポスカード(東京・中野)。元はハウスカードでありながら、現在はマルイ店舗以外での取扱高が全体の9割を超えるなど独自路線を進む。増えているのが30代以下の会員の利用だ。スマートフォン決済を含む決済手段の多様化とプレミアムカード戦略でメインカード化を狙う。
キャッシュレスの現状について、「ショッピング関連のカード取扱高のうち、スマートフォン決済が占める割合は全体の5%程度とまだ小さい。だが、前年比150%近い伸びを示しており、拡大基調にある」と話すのはエポスカード業務部業務課課長の小髙勇輔氏だ。
コロナ禍に見舞われた2021年3月期上期(20年4~9月)、エポスカードのショッピングにおけるカード取扱高は前年比96%にとどまった。商業施設が休業、外出自粛も続く中、旅行やエンターテインメント需要が前年比59%減と落ち込んだ。その分をEC(電子商取引)やスマホ決済を使ったスーパーマーケット、コンビニでの少額決済が補った形だ。
エポスカードでは現在、主に3つの方法でスマホ決済に対応している。1つは他のクレジットカード会社同様、コード決済や電子マネーの決済先として同カードを指定する方法。2つ目は、エポスカードをApple Payに設定する方法。3つ目が独自のコード決済サービス「EPOS Pay」を使う方法だ。EPOS Payは18年11月に開始。当初、マルイ店舗やモンテローザ系列の居酒屋など利用店舗が限られていたが、ジェーシービーが進めるコード決済スキーム「Smart Code」に対応したことで、利用できる店舗を順次拡大している(関連記事「3本柱で普及図るJCB 読み取り方式追加で目標60万店へ疾走」) 。
エポスカード事業企画部事業企画課課長の三宅将克氏は「決済手段の選択肢を広げることが利便性向上、ひいてはカードの利用機会拡大につながる」と説明。スマホ決済の推進をエポスカード利用拡大戦略の必須要素と位置付けた。
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9割がマルイ店舗以外での利用
エポスカードがクレジットカード事業において目指すのは、家計消費におけるシェア最大化だ。これはクレジットカード会社共通のテーマだが、そのためのエポスカードの戦略は他社とやや異なる。それは、エポスカードの歩みと若者中心の顧客基盤によるところが大きい。
エポスカードの前身は、丸井(現・丸井グループ)が発行していたハウスカード「赤いカード」だ。04年に丸井からカード事業を分離、05年にVISAブランドの直接発行権を取得。06年3月から「エポスカード」としてスタートした。
こうした経緯から、一般的にはいまだ「マルイのカード」という印象が強いが、小髙氏は「06年以降、エポスカードは汎用カードとしての特色を年々強めてきた」とその歩みを説く。事実、2兆円以上あるカード取扱高のうち、丸井グループ店舗での決済が占める割合はいまや5%程度。大部分が外部加盟店での決済になった。
汎用化を進めてきたエポスカードの戦略は、そのポイント還元システムにも象徴されている。エポスカードでは、カードの利用に応じて「エポスポイント」がたまる。ユニークなのは、このポイントがマルイでの買い物はもちろん、他社運営を含むネット通販の支払い割引にも充てられることだ。
デパートやショッピングモール、スーパーマーケットなどが発行するクレジットカードの場合、カード利用でたまったポイントは、自社グループ内の商業施設やECサイトで消費する仕組みを採用するのが一般的。グループ内の購買を促すためだ。これに対してエポスカードは、各月のネット通販の利用合計額からエポスポイント分を割り引く。アマゾンでも楽天市場でもオンラインチケットサービスでもカードの利用先は原則問わない。
「もちろんマルイでもエポスポイントを使ってもらいたい。だが、ポイント還元の主たる目的はマルイの利用促進ではない」と小髙氏。会員にとってのエポスカードの利便性をどう上げるか。それを考えたら、ポイントの利用先はおのずとマルイ以外に広がったという。
2021年3月期第2四半期(20年7~9月)のショッピングにおけるカード取扱高が前年比96%としていましたが、正しくは2021年3月期上期(20年4~9月)でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2020/12/11 17:00]
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