コロナ後の「営業DX」大潮流

愛知県豊川市に本社を置く、物流の総合支援会社トヨコンも新型コロナウイルス感染症拡大の影響をもろに被った1社だ。収益を生む柱だった訪問営業は全面的に停止。強い危機意識から社長の鶴の一声で2020年6月に営業組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトが始まったものの、当初営業はデジタルツールの活用を拒んだ。変革の糸口となったのはSansanのイベントDXツールだった。

総合物流支援事業のトヨコンは、営業DX(デジタルトランスフォーメーション)の一歩目を踏み出すのに半年を費やした
総合物流支援事業のトヨコンは、営業DX(デジタルトランスフォーメーション)の一歩目を踏み出すのに半年を費やした

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 特集の第1回では、進化するセールステックのツールを営業プロセスに合わせて整理した「セールステック・カオスマップ2021年版」を公開した(関連記事)。数あるセールステックツールの中でも、20年を象徴するのがイベント管理ツールだろう。リード(見込み客)獲得の常とう手段だったセミナーやカンファレンスがリアルの場では開催しづらくなり、オンライン化が急速に進んだ。イベント管理ツールは「ウェビナー(Webとセミナーを掛け合わせた造語)」の裏側を支え、円滑な運営を可能にする。

 このイベント管理ツールに参入した1社が、オンライン名刺管理サービスで知られるSansanだ。同社が20年10月に提供を始めた「Sansan Seminar Manager」は、セミナー運営に必要な機能を包括的に持つ。既存のテンプレートに沿ってセミナー開催日時など必要事項を入力するだけで、簡単にLP(ランディングページ)が生成される機能、入力されたメールアドレスから社名を推測して自動提案するAI(人工知能)フォーム、ウェビナー参加者の管理機能といった具合だ。動画の配信は動画共有サイト「YouTube」やWeb会議システム「Zoom」などと連携して使う。このSansan Seminar Managerの導入を契機に、営業のデジタル改革を進めているのがトヨコンだ。しかし、その道のりは平たんではなかった。

訪問もオンラインでの新規提案もしない営業組織

 「営業部門は訪問営業ができず、オンラインで新規の提案もしない。きっと今も暇を持て余しているのではないか」

 トヨコンのデジタルマーケティング推進の浦部将典氏は、こう漏らす。トヨコンは倉庫管理、顧客の商材に適した包装材の設計、在庫管理などのシステム開発などを請け負う総合物流会社だ。これまでは地域密着型で、約40人の営業担当者が顧客の元に足しげく通い、ニーズを拾い上げて新商品やサービスを提案する、典型的なオフライン中心の営業体制だった。

 それ故、新型コロナウイルス感染症の拡大以降は「営業が全くできない状況が続いた」(浦部氏)。営業先と名刺を交換する数は、コロナ禍前の3割にまで落ち込んだ。感染状況が深刻な時期は全社的に自宅待機命令が出され、電話が営業の窓口となった。ところが、電話だけで新規の案件は取りづらい。取引先もコロナ禍による影響で出荷数が減り、包装材の利用などの運用収益も激減。危機感を抱いた明石耕作社長の号令の下、デジタルツールを活用し、訪問せずに営業できる体制の整備に着手した。

 新たにインサイドセールスのチームをつくり、手始めに、既に社内のコミュニケーションツールとして導入されていたマイクロソフトのWeb会議システム「Teams」を、外部との商談にも活用してはどうかと働きかけた。ところが営業部門は動かなかったという。「営業担当者は時間があるのに手元にあるデジタルツールすら使わないため、打つ策がない状況が続いた」と浦部氏は苦虫をかみ潰したような顔をする。

「電話営業はきっかけが必要」という言い分

 営業部門の言い分はこうだ。「訪問営業と異なり、電話は何らかのきっかけがないとかけづらい」。確かに一理あった。外回りをしながら、顧客のオフィスに立ち寄って雑談するのと、営業先の担当者に時間をもらって電話で話すのは本質的には同じ。だが、不思議なもので電話のほうは明確な理由がないとかけづらいという、営業担当者の気持ちも理解できた。そこで、浦部氏が考えたのがウェビナーの活用だ。

 まず、特定の商品やサービスに関するウェビナーを実施し、視聴してもらう。ウェビナーの視聴動向やアンケート結果などから関心があると分かれば、営業担当者も電話をする口実になるだろうと考えた。このアイデアを基に社内でプロジェクト化したものの、一向に進まなかったという。トヨコンはオフラインでのセミナーやイベント出展の経験がほとんどなかったからだ。

 障壁となったのはセミナーのコンテンツよりも、集客の窓口となるLPや申し込みフォームの制作、セミナー後のアンケート設計といった、セミナー運営に関わる裏方作業だった。トヨコンはMA(マーケティングオートメーション)ツールの「マルケト」を導入していたが、「マルケトは使いこなすのが難しく、LP制作やアンケートの設計は初心者にはできない」(浦部氏)。一方で、ウェビナーのコンテンツは外部事業者には委託しづらい。商品やサービスを熟知しているのはトヨコンの社員。むしろ、ウェビナーの企画や台本制作に時間を割くべきだと考えた。

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