コロナ後の「営業DX」大潮流

AI(人工知能)を活用した音声解析機能を持つIP電話「MiiTel(ミーテル)」を展開するRevComm(レブコム、東京・渋谷)が、オンライン商談ツールに参入する。ツール名は「MiiTel Live」。既存顧客向けにベータ版として提供しており、2021年1月に正式版の提供を始める。IP電話とシームレスな連携やAI解析機能で、「Zoom」の弱点を補った営業特化型ツールを提供する。

AI(人工知能)搭載IP電話事業のRevComm(レブコム、東京・渋谷)は2021年1月から、オンライン商談ツール「MiiTel Live」の正式版を提供する
AI(人工知能)搭載IP電話事業のRevComm(レブコム、東京・渋谷)は2021年1月から、オンライン商談ツール「MiiTel Live」の正式版を提供する

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 MiiTel LiveはZoomのようなUI(ユーザーインターフェース)で、営業資料などを共有しながらオンライン商談ができるツール。見た目は一般的なWeb会議システムと変わらない。Web会議システムはZoomを筆頭に、マイクロソフトの「Microsoft Teams」、グーグルの「Google Meet」など、大手IT企業がひしめく競争が激しい市場だ。そこにあえてRevCommが飛び込む判断をしたのは、営業に特化したツールがなかったから。AIを活用した営業トークの解析機能やアクセスのしやすさで、既存のサービスとの差異化を図る。

 RevCommが目指すのは「営業のブラックボックス化の解消」だ。従来の営業は属人性が高かった。実際の商談でどのような会話がなされているのかは、営業担当者の本人しか分からない。特に失注した場合は、その要因を分析できれば次の営業活動に生かせる学びになるはず。だが、営業担当者からの主観的な報告だけでは、到底分析に足るデータとは言えない。

【特集】コロナ後の「営業DX」大潮流

 その実現には商談をデータで可視化する必要があった。RevCommの主力製品MiiTelは単なるIP電話ではない。肝は音声解析AIにある。会話内容をAIが自動解析し、会話の要素を定量的なデータにする。インサイドセールスと呼ばれる、いわゆる電話営業に取り組む企業が増えており、その解析ツールとして利用が広がっている。

 例えば、営業担当者の話す速度を表す「話速」、会話のラリーの回数、相手の発言に対する返答の被り回数、営業担当者が話している時間と話を聞いている時間の比率「Talk-Listen比率」といった具合だ。過去の電話営業の履歴はすべてデータ化され、ダッシュボードにグラフ化される。また、AIが会話内容を全文テキスト化すると同時に、営業活動に必要な内容を要約して自動的にシステムに入力されるため、電話終了後に担当者が手入力する手間も省ける。会話の内容をデータで分析すれば、営業担当者が取引先とどのような会話をしているかが分かり、ブラックボックス化の解消につながる可能性が高いというわけだ。

「MiiTel」は営業担当者の過去の電話営業の会話内容や傾向を定量的なデータにし、ダッシュボードで確認できる
「MiiTel」は営業担当者の過去の電話営業の会話内容や傾向を定量的なデータにし、ダッシュボードで確認できる

 さらにそうしたデータは組織で共有できる。トップ営業担当者の営業トークを実際に聞いたり定量的なデータで自分と比較したりすることで、課題の発見にもつながる。電話営業のデータを定量的に蓄積することは、営業組織の教育にも役立つ。

新型コロナショックが参入の契機に

 しかし、MiiTelで営業の内容を可視化できるのは、あくまで電話営業のみ。営業の本丸である訪問営業のブラックボックス化の解消には及ばなかった。ところが新型コロナウイルス感染症拡大によって訪問営業ができなくなったことが、結果的に解決の糸口となった。訪問営業ができなくなった企業の間で、オンライン商談の導入が加速。従来の訪問営業に当たる活動がオンラインになれば、電話営業と同様に内容を可視化することが可能になる。

 先述したWeb会議システムは営業に特化したものではないため、解析機能などに乏しい。録画機能はあるが、それを部内で共有するには1度ファイルをダウンロードする必要があり、手間がかかる。商談動画をすべて見ることも時間の制約上、現実的ではない。そこで期待されるのが、MiiTelの解析技術だ。「MiiTelを導入している企業からは、資料などを対話相手と共有できる機能開発の要望が以前から寄せられていた。商談がオンラインになり、そのニーズはさらに増えた」とRevCommの會田武史社長は言う。Web会議システム市場は競争が激化しているため参入は慎重に検討を進めていたが、今が商機と判断した。

 MiiTel Liveの特徴は大きく2つある。まず、MiiTelと同様の解析機能がそのまま使えること。話速や会話のラリー回数など、MiiTelと同様にデータ化される。また映像と併せて分析できるため、優秀な営業担当者がどこでどのような資料を見せながら、どのように会話しているのかといったことを他の営業担当者は参考にできる。

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