
新型コロナウイルス感染症拡大以降、多くの企業が訪問営業できなくなり、いや応なくDX(デジタルトランスフォーメーション)せざるを得なくなった。中でも課題が大きいのは新規顧客開拓と商談だ。Web会議システム「Zoom」を入れただけでは受注につながらない。それに気づいた企業は、いち早くセールステックツールを導入し、成果を上げている。
「緊急事態宣言下では、訪問営業に代わる手法の導入が一刻を争う状況で、わらにもすがる思いで問い合わせをしてくる企業が多かった」
動画マーケティング支援会社フレイ・スリー(東京・品川)の石田貢CEO(最高経営責任者)はこう当時を振り返る。新型コロナウイルス感染症拡大以降、非接触の推奨やテレワークの導入が進み、訪問営業がしづらくなった。営業はとりわけBtoB(企業向け)事業者にとって命綱だ。経営の根幹を揺るがすことになりかねない。それ故に、営業のDXは喫緊の経営課題だ。その課題に対して、必要な機能を有するセールステックツールの導入が急速に進んだ。
営業が抱える課題は大きく2つ。まず「新規顧客の開拓」が挙げられる。飛び込み営業はもちろん、BtoB企業にとってリード(見込み客)獲得ツールとなるセミナーやイベントの開催が難しくなった。そのため、イベントをオンライン化するためのサービスや、効率的に電話営業をするためのリスト制作サービスを導入する企業が増えた。特にイベントのDXは2020年に最も進んだ分野の1つといっていいだろう。
イベントDXツールは売り上げが20倍に
そうしたニーズを捉え、急成長した企業がEventHub(イベントハブ、東京・中央)だ。同社が展開するイベント管理プラットフォーム「EventHub」は、もともとオフラインのイベント管理ツールとして開発していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、オンラインイベント管理機能を強化。20年4月に「EventHub オンライン」として提供開始後、約半年間で利用企業数が約3.5倍、売り上げは約20倍に拡大した。
EventHub オンラインは、動画を活用してセミナーやカンファレンスをオンラインで実施するためのツールだ。複数のトラックに対応した動画配信、参加者の管理や参加履歴の分析、チャットを活用した参加者同士の交流、オンライン商談など、イベント運営に必要な機能がワンパッケージになっている。用途に応じて機能を組み合わせることで、自社の見込み客発掘のためのウェビナーや、イベント主催者が出展企業を募る大型のカンファレンスまで幅広く対応できる。
もっともすべてが自前ではない。EventHubのプラットフォームをベースに、他社のサービスをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で連携させ、モジュールのように組み合わせることで、この仕組みを実現している。例えば、セミナー動画などの配信は「Vimeo」や「YouTube」と連携する。セミナー中に映像や音声が途切れると、満足度の低下につながりかねない。そのため、自社で開発するより、既に安定して利用できる第三者のプラットフォームを活用すべきだと判断した。餅は餅屋というわけだ。
活用企業は目的に沿った動画配信サービスを選んで利用できるが、「YouTubeは特に権利関係は厳しく、イベント中に流れた音楽などの著作権情報次第で、いきなり動画が止められる恐れがある。そうしたリスクを避ける場合にはVimeoを薦めている」とEventHubの山本理恵社長は説明する。
また、講演中の質疑応答に対応するため、イベント参加者からの質問受け付けや投票機能などをサイトに埋め込める「Slido」を連携。さらにセミナー後は、直接商談の機会が生まれることも珍しくない。そのため、オンライン商談のツールとしてWeb会議システム「Whereby」と連携している。EventHub上で商談予約をすれば、自動的にWherebyで商談が設定される。いずれも、他のサービスに遷移することなくEventHub上で利用できる。
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