個人間の「つながり」が生む新市場 時代は共同購入EC&デリバリーに(画像)

コロナ禍がもたらした未曽有の社会変化をバネに、2020年新たに立ち上がったビジネスがある。共同購入ECの「カウシェ」(運営はX Asia、東京・渋谷)と、弁当のソーシャルデリバリーサービス「JOY弁」(運営はOffisis、東京・豊島)だ。いずれのサービスも、コロナ禍で重要性が再確認された個人間の「つながり」をベースとしたもので、withコロナ時代の新機軸を打ち出す。

前回(第14回)はこちら

20年に相次いでサービスが始まった、共同購入ECの「カウシェ」(写真左)と、ソーシャルデリバリーの「JOY弁」(右)
20年に相次いでサービスが始まった、共同購入ECの「カウシェ」(写真左)と、ソーシャルデリバリーの「JOY弁」(右)

 「ECでコストコのような買い物体験をつくり出したい」

 そう語るのは、「カウシェ」を運営するX Asia代表取締役CEO(最高経営責任者)の門奈剣平氏だ。2020年9月に提供を始めたカウシェは、リアルの友人や家族、会社の同僚、SNS上でつながっている人との共同購入を条件にしたECプラットフォーム。ユーザーにとっては、“シェア買い”をすることで通常のECより最大70%、多くは10~30%オフで商品を手に入れられるのが魅力だ。

 コストコのように大容量の商品を後で分け合うスタイルではないが、仲間を誘ってコストコで買い物するような「ワクワク感」と「お得感」、この2つをECで表現しようとしている。「これまでECサイトとユーザーは1対1の関係だったが、これを『1対多』に変えれば新しい購買体験と、企業にとってはマーケティングの場を生み出せる」(門奈氏)と話す。

 カウシェのUI(ユーザーインターフェース)は、商品画像が並ぶ普通のECサイトと一見同じだ。しかし、商品画面をタップすると「(購入に)必要な人数」、参考価格より割安な「シェア買い価格」が示されており、購入ボタンも「シェア買い」ボタンとなっている。同時購入に必要な人数は多くの場合2人以上。ほしい商品があった場合、そのまま注文を進めて決済が完了すると、「#カウシェでシェア買いしませんか?」というメッセージを添えた商品情報、ECのリンクが自動生成される。それを使って、LINEやTwitterなどのSNSでつながる人に購入を呼びかけるのだ。24時間以内に同じ商品を買う仲間が集まれば割引価格での購入が成立し、集まらなければ注文はキャンセルとなる。

写真左がカウシェの商品画面。中央が一時決済完了後に表示されるLINEなどへのシェア画面。右はLINEで友人にシェア買いを勧めているやり取りの例
写真左がカウシェの商品画面。中央が一時決済完了後に表示されるLINEなどへのシェア画面。右はLINEで友人にシェア買いを勧めているやり取りの例

 現状扱う商品は食品・飲料が中心。といっても、大手ブランドのビールや炭酸飲料から、米、果物、スイーツ、干物セット、冷凍総菜まで、累計で約2000アイテムにのぼる。例えば、ある時「キリン一番搾り」(350ミリリットル24缶入り)で提示されたシェア買い価格(最低2人)は、3840円(税込み)。即座にAmazonで同じ商品を確認すると4368円(同)だったから、カウシェのほうが1割以上安い計算だ。また、カウシェのタイムセールで打ち出された「ウィルキンソン エクストラ」(490ミリリットル、24本入り)は何と600円(同)。こちらはAmazonで2334円(同)、7割以上安いことになる。

試しにキリン一番搾りで比べたところ、Amazonよりカウシェのほうが1割以上安かった。カウシェの割引価格の基となる「参考価格」は主要なECサイトを念入りに調査し、反映しているという。送料の設定は販売事業者によって異なるが、一番搾り、ウィルキンソンの事例はいずれも関東への配送無料だった
試しにキリン一番搾りで比べたところ、Amazonよりカウシェのほうが1割以上安かった。カウシェの割引価格の基となる「参考価格」は主要なECサイトを念入りに調査し、反映しているという。送料の設定は販売事業者によって異なるが、一番搾り、ウィルキンソンの事例はいずれも関東への配送無料だった

 この割安価格のカラクリは、商品を販売する事業者にとってカウシェは“販促いらず”の場であることが大きい。従来のECならプラットフォーム手数料の他に、商品の販促費用を織り込んで値付けする必要があった。それがカウシェなら、ユーザーが“勝手に”商品の宣伝をしてくれる。口コミがうまく広がれば、まとまった注文が舞い込むことになる。この口コミ伝播(でんぱ)への期待が、割引価格の原資につながるのだ。

 実際、「これまでで1グループへの参加人数が最も多かったのは、『天津甘栗(から付)240g』(参考価格890円でシェア買い価格は300円)という商品。起点となったユーザーがLINEグループなどで口コミを広げ、実に190人もの同時購入者を集めた」(門奈氏)という。

 こうしたカウシェの仕組みは、さとなお(佐藤尚之)氏が提唱する「ファンベース」の考え方にそうものだ。いたずらに新規顧客を追うのではなく、コアファンから価値観が同じ「類友」へ、さらにその類友へとファンの輪が広がっていくことを目指す。まさにカウシェは、このサイクルが生まれやすいECで、口コミ伝播から購入までの流れをシームレスにつなげている。知る人ぞ知る絶品スイーツや地方のこだわりの名産品など、ECでは存在感が薄かった一部のファン垂ぜんの品も日の目を見やすい仕組みといえるだろう。

社名:X Asia(東京・渋谷)
設立:2020年4月
製品/サービス:シェア買いアプリ「カウシェ」
市場:個人間のつながりを軸にしたソーシャルEC市場
個人間の「つながり」が生む新市場 時代は共同購入EC&デリバリーに(画像)

成功モデルは中国にあり

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