
画像・映像認識を中心としたAI(人工知能)アルゴリズムで現場の課題解決に特化し、多様な業界の企業と連携プロジェクトを走らせる注目のベンチャーがある。日本のAI研究をリードする、東京大学松尾研究室のメンバーが中心となって立ち上げたACES(東京・文京)だ。小売り、建築、製造、保育、介護、エンタメ、報道…プロジェクトを推進する業界は多岐にわたる。AIバブルといわれる中、地道に現場に向き合い社会実装を目指す。
「報道機関での資料の自動収集・整理」「小売店におけるトップ販売員の知見を用いた営業品質の向上」「工場における危険行動の検知・事故防止」「プロスポーツ選手のパフォーマンス強化・ケガ予防」……。
ACESは、“人の手”による業務が色濃く残り、アナログなリアル産業を対象にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することに強みを持つ。特定の業界・業種ではなく、冒頭で書いたようにその対象領域はさまざまで、「人が関わるあらゆる単純作業を自動化・効率化し、熟練者の作業を継承することで、だれもがいきいきと生きられる社会を目指す」(ACES CEOの田村浩一郎氏)というのが、同社のビジョンだ。
バリューチェーン全体を眺め、人が介在する節目を見つける
同社が考えるDXの第一歩は、その企業の一連の業務であるバリューチェーンの、どの部分に人が介在する“節目”があるのかを探すことから始まる。「リアル産業の場合、部分的にデジタル化や自動化が進んではいても、人の認知処理や作業が発生している部分が必ずある。その節目をAIを活用した“機械の眼”でデジタル化し、上流から下流まで一気通貫につなげていくことが重要」(田村氏)という。
人が介在する節目は、企業もしくは現場それぞれで大きく異なる。そのため、基本的にはソフトウエアやアルゴリズムをただ提供するのではなく、1社ごとにプロジェクト形式で課題の洗い出しから取り組む必要がある。
例えば、テレビ東京ホールディングスと共同で推進している「報道現場のDX化プロジェクト」の場合を見てみる。ニュースを報道するまでのバリューチェーンは、大まかに分けると「情報収集・管理」「取材」「制作」「配信」の4段階。その中から、まず課題を洗い出すべく目を付けたのが、最も上流部分である情報収集・管理のプロセスだ。現場をつぶさにチェックし、さらに現場担当者からもヒアリングをしたところ、ここに大きな節目があることが分かった。
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