「健康・医療」分野で、IoTを駆使した“快眠コンサルティング”事業を手掛けるニューロスペース(東京・墨田)が注目されている。敷布団の下に置いて睡眠状態を測定する小型装置とアプリなどを活用した睡眠習慣の改善プログラム「lee BIZ(リービズ)」を企業向けに提供。テクノロジーで人々の眠りの質を高めるSleepTech(スリープテック)」と呼ばれる新しい市場を開拓中だ。

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睡眠習慣の改善プログラム「lee BIZ(リービズ)」の概要。小型測定機器でデータを収集し、アプリで対策を表示したり、研修やワークショップで理解を深めたりすることで、社員の行動変容につなげる(ニューロスペースの図より)
睡眠習慣の改善プログラム「lee BIZ(リービズ)」の概要。小型測定機器でデータを収集し、アプリで対策を表示したり、研修やワークショップで理解を深めたりすることで、社員の行動変容につなげる(ニューロスペースの図より)
社名:ニューロスペース(東京・墨田)
設立:2013年12月
製品/サービス:lee BIZ 、運輸業界向けのアプリ開発など
市場:SleepTech(スリープテック)

 ニューロスペースの創業は2013年。社員の健康を「眠り」の面から支援し、「眠りの質」を改善するプログラムを開発することで、心地よい眠りにつなげようとした。狙う市場は、社員の健康を経営課題の1つととらえる「健康経営」に関心が強い企業の人事部門。19年11月からはIoTやアプリを活用したlee BIZを提供。社員ごとに眠りの質をデータで分析する新たなプログラムを展開し、SleepTech市場に向けて本格的に動き出した。同社のプログラムは20年11月までに約100社が導入し、このうちlee BIZは約30社が採用した。

 「よく眠れないなど私自身も睡眠に課題を持っていたのが、ニューロスペース設立のきっかけだった。企業が健康経営を推進するにも、社員の睡眠は重要な要素になる。集中力が高まり、考え方もポジティブになるなど仕事がうまくいく」。こう語るのはニューロスペースの小林孝徳社長だ。

 「睡眠負債」「働き方改革」「健康経営」といったキーワードが17年ごろから登場するにつれ、SleepTech市場も期待が高まってきた。市場規模は明確ではないが、米シンクタンクのランド研究所から「睡眠不足などによる会社員の生産性低下が日本では年間15兆円の経済損失をもたらす」との試算もあり、寝具やサプリ、IT関連などの企業がしのぎを削っている。

 ニューロスペースはlee BIZを開始するに当たり、イスラエルのEarlySense社と業務提携。同社の高精度な小型測定機器を活用することにした。これをマットレスの下に設置し、呼吸や心拍、体の動きなどのデータを収集する。睡眠時間や寝つきまでの時間、途中に起きた時間や回数、さらにノンレム睡眠やレム睡眠といった眠りの質も把握。非接触でありながら、高精度の計測ができるという。

 分析したデータから、個人ごとに生活習慣の改善をアプリでアドバイスする。例えば、眠気のピーク時間や最適なトータルの睡眠時間から、運動や入浴などのタイミングを表示。眠気が出やすい時間帯が昼間であれば、仮眠などの行動を促進するし、必要な睡眠時間を確保できない場合は睡眠の質を向上させることで対応する。

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