
特集「未来の市場をつくる100社」の10社目は、AI(人工知能)を活用した世界初の恋愛ナビゲーションサービスを展開しているスタートアップ、Aill(エール、東京・港)を取り上げる。コロナ禍で外出や飲み会がしづらくなり、異性と出会う機会が減った独身男女の仲をAIが取り持つ。AIによる「恋愛革命」がもたらすインパクトとは?
チャット開通後1カ月以内でのデート進展率は約33%、そしてデートに誘った場合の受託率は88%――。
そんな、すご腕恋愛マスターも驚く数字をたたき出したのが、AIを使った恋愛ナビゲーションサービス「Aill(エール)」だ。これは、2019年11月~20年3月に行われたトライアルでの結果。AIの恋愛アシストがない場合に比べて、デートの進展率は4倍、受託率は8倍に達し、違反行為もゼロだった。
こんな衝撃的な実績を引っさげ、Aillは20年9月から本格展開を開始。政府は21年度から自治体による「AI婚活システム」の導入を支援する方針を決めたが、先行してAillは企業の福利厚生サービスとして広がる。大手会員制福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」を運営するベネフィット・ワンと業務提携しており、すでに導入企業はNTTグループやみずほ銀行、JR東日本など、12月初旬時点で490社を超えた。「21年3月ごろには2000社に達する見込み」(Aill社長の豊嶋千奈氏)と、爆発的な勢いでサービスを拡大している。
その背景には、コロナ禍で企業が新たに直面した問題が潜む。在宅勤務が広がり、飲み会も自主制限せざるを得ない状況下で、独身社員の出会いの場が失われつつある。私生活が充実していないと仕事のパフォーマンスに影響することは必至だ。しかし、裏を返せば、ここをサポートすれば社員のモチベーションやエンゲージメントが高まる期待がある。社員のワークライフシナジー(仕事と生活の相乗効果)を生み出す施策の一環として、企業はAillを取り入れ始めたのだ。
Aillは不特定多数が登録する既存のマッチングアプリとは異なる。参加できるのは、導入企業の独身社員だけで、参加者の身元が担保されているぶん安心感がある。企業によって異なるが、社員が支払う利用料は月5000円程度だという。
肝心のサービスの中身も、既存のマッチングアプリが写真や簡単なプロフィルを基に男女が出会うところまでをサポートするのに対し、AillはAIがチャットを使った会話をアシストし、デートにつなげるなど恋愛の進展を手助けする。知り合った2人が付き合うことになったら、Aillからは“卒業”する仕組みだ。トライアルの結果では、早い人で利用開始から3カ月、多くは6カ月~8カ月程度で卒業していくという。
では、なぜ冒頭で紹介したような高確率の恋愛成就が達成できるのか。そのカラクリを見ていこう。
設立:2016年10月
製品/サービス:AI恋愛ナビゲーションサービス
市場:少子化対策、ワークライフシナジーを生む福利厚生サービス市場

もう恋愛で傷つかなくなる?
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