なりすましや不正を防ぐため、オンライン上で本人確認をするeKYC(electronic Know Your Customer)が、スマホ普及を背景にさまざまなサービスで広がっている。TRUSTDOCK(トラストドック、東京・千代田)は、アナログの手続きも扱う「KYCの商社」として、アジアを中心とする世界市場も視野に入れる。

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ネットサービスの事業者が、オンライン上で顧客の本人確認をするための手続き/技術であるeKYC(electronic Know Your Customer)が広がっている
ネットサービスの事業者が、オンライン上で顧客の本人確認をするための手続き/技術であるeKYC(electronic Know Your Customer)が広がっている

 あなたの会社がサービスを提供している顧客は、本当にその人だろうか。なりすましや不正に使われている可能性はないだろうか。多彩なモバイルサービスが広がったことを背景に、セキュリティー上の懸念が高まっている。そんな中で、不正を防ぐための技術として注目を集めているのがeKYCだ。例えば、2020年9月にNTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を通し、地方銀行から預金の不正な引き出しが見つかった問題では、安全性を高めるためにeKYCに対応させた(関連記事)。

 仮想通貨のような金融サービスを新規登録するときに、本人確認のためネット越しに免許証と自分の顔写真を提出したことがあるという人もいるかもしれない。最近では携帯電話の新規加入時にeKYCの手続きを取り入れているケースもある。店舗に出向いて紙の用紙に記入したり、身分証明書のコピーなどを郵送で送ったりする手間がいらず、スマホで手軽に申し込めるというわけだ。

人手がかかる作業もカバー

 これまでのモバイル活用を含むデジタル社会では、情報を閲覧する、あるいはコンテンツを消費するための用途が多かった。例えばニュース、SNS、ゲーム、動画。ネット広告もそうした情報配信の一種だろう。「それらのサービスは必ずしも厳しい身元確認が必要なわけではない。だが今後はより現実の生活に密着したサービスが広がる。より厳密な本人確認が必要になる」と指摘するのは、本人確認の基盤サービスを展開するTRUSTDOCK(トラストドック、東京・千代田)の千葉孝浩CEO(最高経営責任者)だ。

TRUSTDOCK(トラストドック、東京・千代田)はeKYCのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース、プログラムの部品)を提供している。図はTRUSTDOCKの資料を基に編集部で作成
TRUSTDOCK(トラストドック、東京・千代田)はeKYCのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース、プログラムの部品)を提供している。図はTRUSTDOCKの資料を基に編集部で作成

 同社は、eKYCのために使うAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース、プログラムの部品)を提供している。例えば、免許証などの写真と本人の顔をスマホで撮影して画像データを送信する、マイナンバーカードのICチップをスマホのNFC(近距離無線の通信規格)で読み取って本人であることを確認するといった機能を持つ。

社名:TRUSTDOCK(トラストドック、東京・千代田)
設立:2017年11月
製品/サービス:本人確認API基盤、デジタル身分証アプリ「TRUSTDOCK」
市場:ネット上の本人確認を支えるeKYC基盤

 サービスを運営している会社がWebサイトやアプリにAPIの機能を取り込むことで、簡単に本人確認の機能を付加できる。ヤフーのスポーツくじ販売サイト「Yahoo! toto」、ソフマップの買い取りアプリ「ラクウル」、トランスファーワイズ・ジャパン(東京・千代田)の海外送金サービス「TransferWise」などが、TRUSTDOCKのAPIを採用している。

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