「SDGs・ESG」分野で新しい市場をつくる会社として注目される1社がWOTA(ウォータ、東京・文京)だ。独自のセンサーやAI(人工知能)を活用し、生活用水を循環して再利用できる小型の水処理システム「WOTA BOX」を開発した。災害現場など水道が使えないときのシャワーや手洗い、洗濯などに使える。今後はレジャーやイベント用の他、家庭やオフィス市場も目指す。狙うのは水処理の“民主化”だ。

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ホワイトの「WOTA BOX」とシャワー用のテントセット。避難所50人分の1日当たりの生活用水を1台で供給できるように装置を設計している
ホワイトの「WOTA BOX」とシャワー用のテントセット。避難所50人分の1日当たりの生活用水を1台で供給できるように装置を設計している
社名:WOTA(ウォータ)
設立:2014年10月
製品/サービス:WOTA BOX、WOSH、WOTA PLANT
市場:生活用水の水処理ソリューション

 「水道がない地域でも、きれいな水を使えるようにしたい。そんな思いが、当社を設立した大きな理由。このため、使った水をその場で循環して使う仕組みを考えた。水を再生処理するだけなら以前からさまざまな技術があるが、当社の新規性は独自に開発した自律制御技術だ。大規模施設が必要だったシステムが安価になって小型化できた。持ち運びが可能になり、どこでも水を得ることができるようになった」。こう語るのはWOTAの前田瑶介CEO(最高経営責任者)だ。

 WOTA BOXは小型の水処理施設ともいえる装置。独自のセンサー技術とAIによる機械学習の機能を組み合わせて水質を詳細に分析し、その結果から自動的にフィルターにかける水圧などを調整したり、塩素や紫外線で殺菌したりすることで、排水の98%以上を再利用できる。水質は時がたつにつれて変わっていくため、状況を分析してすぐに必要な処理をする必要がある。そこで大規模施設のように専門家がいなくても済むよう、運用管理の自動化を徹底できる仕組みを考えた。同社のセンサー技術は、他社と同じ機能や信頼性を低価格で提供できるという。センサーの設置数を増やして多くのデータを取得し、それをAIでモデル化して最適解を出すことで自律制御するわけだ。

WOTAの前田瑶介CEOは、これまで都市インフラを研究してきており、東日本大震災の体験から水インフラに関心を抱くようになったという
WOTAの前田瑶介CEOは、これまで都市インフラを研究してきており、東日本大震災の体験から水インフラに関心を抱くようになったという

 小型化が新たな市場開拓につながった。きっかけは16年の熊本地震だった。被災地にシャワー用システムとしてWOTA BOXの試作機を持ち込んだところ大好評だった。その後も豪雨や地震などに見舞われた地域に試作機を運び、支援を続けた。被災地での教訓から、持ち運びも簡単な現在のWOTA BOXが生まれた。避難所50人分の1日当たりの生活用水を1台で供給できるように装置を設計し、幅820×奥行き450×高さ933ミリメートルで重量は82キロだ。

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