
特集「未来の市場をつくる100社」の5社目は、非対面販売、かつ24時間いつでも利用できる自動販売機の可能性に着目し、飲料以外の高単価、高付加価値商品の販売を仕掛ける、スキマ デパート(東京・千代田)を取り上げる。コロナ禍で販売チャネルとしての価値が見直されつつある自販機は、どう進化していくのか。
その数、約240万台(2019年末時点)。最盛期より減少したものの、いまだ日本は人口当たりの普及率で世界屈指の「自動販売機大国」だ。全国5万5000店舗を超えるコンビニと比べても、圧倒的なリーチの差がある。ただし、大手飲料メーカーによる飲料自販機が大半を占め、販売商品のバリエーションはそう広がっていない。ここに高単価、高付加価値の商品を持ち込み、風穴を開けようとしているのがスキマ デパート(東京・千代田)だ。
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「自販機は未活用の小スペースを生かし、かつwithコロナ時代に求められる“非接触販売”ができる、古くて新しい有望なチャネル。これを飲料の販売だけに使うのはもったいない」と、スキマ デパート社長の芳屋昌治氏。販売アイテムの多様化を進めれば、エリアの特性に応じた商品を扱う“無人コンビニ”や“屋外デパート”として、都市機能のすき間を埋められるというわけだ。
中核となるアイデアは、自動販売機ならぬ「自由販売機」の事業だ。その名の通り、飲料だけではなく、食品も土産物もキャラクターグッズも、はたまたコト消費につながる体験チケットやクーポンまで、自由な発想で商品を売れる自販機である。扱う商品に合わせて既存の自販機をカラーリングし、ロング缶やペットボトルサイズに商品を収めて販売するタイプから、大型ディスプレーを備えて大きめの商品も扱えるタイプまで、現在は約20台が自由販売機として稼働している。21年は100台を超える見込みだ。
例えば、19年から横浜DeNAベイスターズや読売巨人軍と組み、チームカラーに彩った自由販売機でオリジナルグッズを販売。読売巨人軍が本拠地とする東京ドーム最寄りの水道橋駅に設置した自由販売機では、試合のある日ともなると1個1500円の選手オリジナルタオルが1日で100個以上も売れたという(現在はシーズンオフのため一時撤去)。
また、20年6月には、サイバード(東京・渋谷)の人気恋愛ゲーム「イケメンシリーズ」とコラボ。キャラクターごとのラッピングを施した全14種の「缶バッジ付き天然イケメン水」(1本800円)を扱う自由販売機を、サブカルの街として知られる東京・池袋に設置。こちらはキャラクターがランダムに出てくる仕掛け。ファンが目当てのイケメンを引き当てるために何度もリピートし、設置から僅か3日で1000本以上を売り上げた。現在は「KING OF PRISM」(通称キンプリ)などの人気コンテンツを加え、渋谷の「自由販売機ストア」にて稼働中だ。
このように土地の特性や人々の導線に合わせて、売れるところに売れるものを配置できること、場合によっては、くじ要素も付加できるのが、自由販売機の強みだ。既存の飲料自販機ではほぼあり得ない、わざわざ設置場所まで出かける「目的買い」も誘発できる。
設立:2016年9月(旧会社は15年1月)
製品/サービス:自由販売機の展開など
市場:飲料以外の高単価・高付加価値商品を扱う自販機市場

自販機がリアル店舗のサテライト店に
もう1つ面白いのが、自由販売機によってリアル店舗の機能を“拡張”できることだ。
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