日経クロストレンドでは牛丼チェーン、コンビニ、ドラッグストア、アパレルなど10業種の主要40社の月次売り上げデータが分かるビジュアライズを作成。2022年3月の月次データを更新した。吉野家は21年10月以降、既存店売上高前年同月比がプラスで推移。22年3月は2年前比でもプラスだった。反転攻勢に向かうタイミングで舌禍は起きた。

 常務取締役の不適切発言で炎上した吉野家。それに先立つ2022年4月13日、吉野家ホールディングスは22年2月期の決算を発表した。持ち帰りすし大手の京樽を売却したことで、売上高こそ前期比9.8%減だったが、営業損益は前期53億3500万円の赤字から、23億6500万円の黒字にV字回復。23年2月期も営業利益34億円(前期比43.8%増)を見込んでいる。

 それでも“新型コロナウイルス禍前”の水準には戻れていない。「吉野家」事業の売上高は22年2月期、前期比1.4%増収の1070億4700万円だったが、コロナ禍前の20年2月期は1116億8500万円を売り上げていた。

 一方、競合の「すき家」を運営するゼンショーホールディングスは3月決算のため、通期決算の発表はまだだが、22年3月期第3四半期累計期間の牛丼カテゴリー売上高は1749億2600万円で、前年同期比7.5%増。コロナ禍前に当たる20年3月期第3四半期の売上高1679億1400万円を上回っている。

牛丼チェーン3社、および「かつや」「餃子の王将」の既存店売上高2年前同月比の推移
牛丼チェーン3社、および「かつや」「餃子の王将」の既存店売上高2年前同月比の推移

 上図は、牛丼チェーン3社と、とんかつ・かつ丼の「かつや」、中華料理チェーン「餃子の王将」を加えた5社の既存店売上高について、コロナ禍前=2年前の同月比推移をグラフ化したものだ。かつやと餃子の王将は、牛丼3社と比較的近い動きをしているため、参考に掲載した。ちなみに、「マクドナルド」や「モスバーガー」などコロナ禍でテークアウト需要をつかんだファストフード店は、2年前比120%前後と高い水準で推移している。

 すき家は、地方や駅近ではない立地の店舗が比較的多いことが、コロナ禍ではプラス材料になった。郊外立地が中心のかつやも似た推移を示している。反対に、都市部の出店が多い松屋は、営業時間の制約やテレワーカーの増加によって回復が遅れている。吉野家は両者の間に位置し、餃子の王将と競り合う格好だ。

 吉野家はコロナ禍に突入した20年3月、公立小中学校が一斉休校になったことを受けて実施した、12歳以下の子供向け牛丼並盛を割引販売する施策がヒット。家族分を購入する新規顧客を獲得したが、その新規客が定着したかというと、そうとは言い難い。22年2月期はコスト削減効果で営業損益を改善できたことから、23年2月期以降は攻めに転じる中期経営計画を発表。“黒い吉野家”とも呼ばれるおしゃれな「クッキング&コンフォート」モデルへの改装を3年間で500店舗規模に拡大し、女性&ファミリー層を開拓していく内容だった。その直後に常務の舌禍は起きた。

 もっとも吉野家側は常務を速やかに解任しており、一部消費者からは「現場は悪くない」と、“食べて応援”の動きも見られる。新作メニュー親子丼の記者会見は中止になったものの、ワイドショーなどで事件が取り上げられたことで結果として親子丼発売の認知も上がっている。外食産業にとって最も怖いのは食中毒や異物混入など食の安全が損なわれることであり、また消費期限切れ食材の使用や産地偽装のような会社ぐるみで消費者を欺く行為も、不信払拭に時間がかかる。今回の舌禍はそれらに比べれば回復の余地はある。22年4月の月次データは注目が集まりそうだ。

 なお、22年3月の全10業種主要40社の月次売上推移は以下から確認できる。

ビジュアライズツールの使い方
 ビジュアライズツールでは、ドラッグストア、コンビニエンスストア、バーガーチェーン、牛丼チェーン、回転ずしチェーン、ファミリーレストラン、アパレル、紳士服、家具・ホームセンター、100円ショップの10業種、主要40社の月次売り上げデータを比較できる。データは「既存店売上高前年同月比」で2019年1月以降の数字を収録している。新規店舗出店の影響を除いた既存店の売上高を前年同月の数字と比べることで、その企業・ブランドの好不調の把握が可能だ。セブンイレブンとローソン、ファミリーマート、ユニクロとしまむらなど、業種別の主要プレーヤー同士の増減が比較できるようになっている。

 新型コロナウイルス禍における月次データは、前年同月が緊急事態宣言で営業縮小や休業していた場合、その反動で数字が大きく出るケースがある。例えば前年同月比140%という数字をどう考えればよいか。一見すると「V字回復」だが、前年が60%と低迷していた場合は、0.6×1.4=0.84で、2年前の同月に比べて84%の水準にとどまっていることになる。このような計算で“回復度”を見る必要がある。

 日経クロストレンドでは、毎月このデータを更新して公開していく予定だ。どの業種のどの店舗が売り上げを伸ばしているのか、あるいは逆の状態にあるのか。そのトレンドをつかむためのヒントとしてお役立ていただきたい。

<ツールの操作方法>
●業種の選択
業種の一覧から業種名を選択することで、下のグラフが切り替わり、業種別の主要各社の月次売り上げ推移のデータが分かる。

●会社の絞り込み
グラフ上部の会社名を押すことで、その会社のグラフ表示をOFFにして、表示するグラフを絞り込むことができる。

●グラフの切り替え
切り替えボタンを押すことで、折れ線グラフか、表形式での売り上げデータ一覧か表示を切り替えることができる。

●対象企業
【バーガーチェーン】マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキン
【牛丼チェーン】吉野家、すき家、松屋
【回転ずし】スシロー、くら寿司、かっぱ寿司
【ファミリーレストラン】すかいらーくグループ、ロイヤルホスト、サイゼリヤ
【ドラッグストア】ウエルシアHD、ツルハHD、コスモス薬品、サンドラッグ、マツモトキヨシ、スギHD、ココカラファイン、クリエイトSD、クスリのアオキHD、カワチ薬品
【コンビニエンスストア】セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソン
【紳士服】青山商事、AOKIHD、はるやまHD、コナカ
【アパレル】ユニクロ、無印良品、しまむら、ワークマン
【家具・ホームセンター】ニトリ、DCM、コメリ、コーナン
【100円ショップ】セリア、キャンドゥ、ワッツ

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