中国の自動運転の開発は、その利用シーンによって実用化の進展に大きな違いがある。清掃など作業用自動運転車は既に各地で稼働している一方、一般道路を走行する一般市民向けのサービスは実用化された地域が極めて限定されている。中国の自動運転車の開発&実用化の状況を、利用シーンごとに解説する。
中国の自動運転の開発は、その利用シーンによって実用化の進展に大きな違いがある。清掃や鉱業などの現場で用いられる作業用自動運転車は既に稼働し始めており、物流や自動運転バスも指定された範囲で実用試行運転を実施している。また、複数の都市の一般道路でロボタクシーが実用サービスを始めている。
【ロボタクシー】
インターネット大手の百度(バイドゥ)をはじめとする複数の企業が積極的にロボタクシーの開発と宣伝を行うため、一般の消費者にとって最も身近な自動運転技術になりつつある。
ロボタクシーは一般市民向けに既にサービス開始
百度Apolloのロボタクシーが2019年9月に湖南省長沙市にて一般道路での試験運行を開始し、20年4月から一般市民へのサービス提供を始めた。また、20年8月に河北省滄州市に30台、20年9月に北京市に40台のL4ロボタクシーを配置し、一般市民へのサービスを開始した。どちらも百度の地図アプリ内の配車機能を使って利用できる。
19年11月、自動運転ベンチャー企業の文遠知行(シリーズAでは仏ルノー、日産自動車、三菱自動車工業による3社連合Alliance RNMが出資)が、広州ローカルタクシー会社と提携し、中国初の一般利用できるロボタクシーサービスを開始した。20年6月には、文遠知行が地図アプリ大手の高徳と提携し、高徳地図アプリ内のロボタクシー配車サービスを使うことで、ロボタクシーを利用できるようになった。
20年6月、配車アプリ大手のDidi Chuxing(滴滴出行:ディディチューシン)が上海でロボタクシーの配車試験を始めた。
今まで試験運行しているロボタクシーはすべて、自動運転で走るものの、政策的な配慮と技術的な制限、それにトラブル対策として「安全員」が一人同乗する形を採っている。特に百度Apolloは、20年9月から、「クラウド安全員」の形を採ることで、自動運転をより無人化している。5Gネットワークを利用し、ロボットが持つ機能の多くをクラウド化することによって、一人の安全員が数台のロボタクシーをサポートすることができた。20年の「百度世界大会」では、同じ技術を使う「クラウド代行運転」サービスも公開されて、AI時代の新たな運転手のあり方が提起された。
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