新型コロナウイルス感染症拡大の影響で「リモートワーク」という働き方が一気に広がった。そのためのツールとして世界的に注目されたのがビデオ会議ツールの「Zoom」だ。このアプリを開発した米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(以下ズーム社)で戦略策定やテクノロジー開発を統括するハリー・モーズレイ氏が、「日経クロストレンドFORUM 2020」に登壇。「Working in the Next Decade(次の10年間の働き方)」と題した基調講演で、コロナ禍を機にZoomが人々の働き方や日々の生活に与えた影響について語った。次世代のスマートホームを企画・施⼯するHOMMAを⽶シリコンバレーで起業した本間毅⽒が聞き手となり、モーズレー氏が話した内容をまとめた。

米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ グローバルCIOのハリー・モーズレイ氏(右)と、HOMMAの創業者・本間毅氏(左)
米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ グローバルCIOのハリー・モーズレイ氏(右)と、HOMMAの創業者・本間毅氏(左)

アフターコロナではリアルとバーチャルが混在

 ズーム社のグローバルCIO(Chief Information Officer)、ハリー・モーズレイ氏が同社にスカウトされたのは2018年。当初は週に3、4回は飛行機に乗るような出張の日々だったという。「世界各地を飛び回って、人に会ったり、イベントに参加したり。ホテルはシャワーを浴びるだけで、眠るのは飛行機の中といった生活が続いていた」とモーズレイ氏。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響でズーム社は全社的にリモートワークに移行、モーズレイ氏の生活は大きく変わった。

 モーズレイ氏は「20年に入ってからは2月25日以来、飛行機に乗っていない。出張は私がやりたくないだけでなく、してはいけないことになった」と話す。それまで移動に費やしていた時間がなくなったことで、自宅で料理を作ったり、妻と一緒にワインを楽しんだりする時間が増えたという。「来年また日経クロストレンドの基調講演に呼ばれても『来日しなくていい。バーチャルで十分』と言われてしまうかもしれないね」とモーズレイ氏は笑った。

 一方でモーズレイ氏は、現実の生活(リアル)にはZoomを経由した空間(バーチャル)では補い切れない部分もあると言う。「今後すべてがバーチャルになるというわけではなく、リアルとバーチャルが混在する形になると思う。リアルがいいという場合もあるし、バーチャルで十分という場合もある」(モーズレイ氏)。日本ではZoomを経由した飲み会「Zoom飲み」も流行したが、モーズレイ氏は「Zoom経由で同僚と一緒に食事をすることはあるが、レストランに行くのとは全く違う。みんなと会って話す雰囲気の部分はバーチャルでは補えない」と、リアルの必要性を強調した。

リモートワークのほうが生産性が上がる

 モーズレイ氏は、リアルとバーチャルとでは仕事の管理法も違うと考えている。「バーチャルでは人を管理するのではなく、仕事の結果を管理することになる。重要なのは成果物や業務への貢献度。例えば朝4時に起きて仕事を始め、午後1時か、2時に切り上げてもいい。それで仕事に支障が出ない限り、本人の裁量に任せる」(モーズレイ氏)

 リモートワークになると人はサボってしまうので生産性が下がるともいわれるが、モーズレイ氏は「そんなものは都市伝説だ」と言い切る。「リモートワークには通勤時間がなくなるという側面もある。子供たちは学校に戻ったほうがいいが、リモートワークによってライフワークバランスがうまく取れるようになると社員は幸福になり、もっと頑張って仕事をする。会社への忠誠心も上がる」とモーズレイ氏。「1年前は自宅で仕事をする際に会社の許可が必要だったものが、今では出勤するのに許可を取るようになっている。180度、状況が変わっているということだ」(モーズレイ氏)

 また、多くの企業が取り組もうとしているダイバーシティーの推進にもリモートワークは欠かせない。モーズレイ氏は、世界中の人材を採用できるようになったこともリモートワークが定着したことのメリットだと言う。就労許可や就労ビザを取得する必要がなく、引っ越しの心配もないからだ。

 「Zoomは文化の違いに左右されないツールだと思う。自分たちの文化に合う形で使ってもらえばいい」とモーズレイ氏。

 Zoomをはじめとするビデオ会議ツールが急速に普及する一方で、リアルの会議よりバーチャルの会議のほうが疲労を感じやすく、「Zoom疲れ」という言葉も生まれた。このZoom疲れへの対策について問われたモーズレイ氏は「Zoom疲れを感じる人は、カレンダーにZoom会議をギッシリ詰め込んでいるのではないか。リアルでは仕事中にコーヒーに誘われるなどすることで、いい意味での“邪魔”が入る。リモートワークではそうしたことがないので、パソコンの画面から離れる時間を自分でつくることが大事」と答えた。

 最後に「Zoomは業務を効率化できるツールだが、100%バーチャルがいいとは思わない。リアルとバーチャルのバランスをうまく取ってほしい」と述べてモーズレイ氏は講演を終えた。

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