定番化にはこれからどう育てるかが問題

 では、そもそも日本コカ・コーラがなぜアルコール飲料を開発することになったのか。こう問われると、和佐氏は「我々の主戦場である清涼飲料水にアルコールメーカーが侵食してきている実情に対し、やり返さなければという思いから。なんとか一泡吹かせたかった」と笑って見せた。

 とはいえ、海外では飲料とアルコールの垣根を越え、メーカーが商品を展開することはほとんどない。プレッシャーはなかったのか。

 「特になかった。この案件については、消費者調査に頼るも頼らないも含めて私に全権が与えられた。グローバルからの要望は、『コカ・コーラならではのものを出してくれ』ということだけ。そこで、小さなチームで開発を進めた」と言う。

 そんな和佐氏が、消費者に商品を購入してもらうために必要な要素として挙げるのが、「ストッピングパワー」「ホールディングパワー」「クロージングパワー」の3つのパワーだ。

 ストッピングパワーは店頭で「これ何?」と気づかせ立ち止まらせるための、ホールディングパワーは手に取ってどんな商品か興味を持ってもらうための、クロージングパワーはカゴに入れてもらうための力、それぞれの仕掛けのことだ。

和佐氏によると、消費者に商品を購入してもらうには、3つのパワーが必要という
和佐氏によると、消費者に商品を購入してもらうには、3つのパワーが必要という

 ホールディングパワーからクロージングパワーへ移行させるためには商品のパッケージなども関係する。「商品を手に取るときは裏面(のデザイン)にもヒントがあるのではないか。檸檬堂では『前割りレモン製法』という文言がそれに当たる」と和佐氏。

 また、先に挙げた3つのパワーは、P&Gが提唱したマーケティングの概念「FMOT(ファースト・モーメント・オブ・トゥルース)」に含まれるものだが、「それ以前の『ゼロ・モーメント・オブ・トゥルース』(ZMOT)も大切だと思う。これは、店頭に行く前の認知の醸成。その結果、3つのパワーが働いて買ってもらえる。

 そしてその後に来るのが、実際にブランドイメージを体験して価値を判断する『セカンド・モーメント(・オブ・トゥルース)』。この組み立てがマーケティングでは非常に重要になる。これがないと定番化するのは難しい。セカンド・モーメントで価値を認めれば、ファンがSNSを通じたアンバサダーにもなってくれる」と説明した。

 最後は、和佐氏にとってのマーケティングの定義に話題が及んだ。和佐氏によると「物が売れる仕組みに携わることはすべてマーケティング。コカ・コーラ内でのミッションは売り上げを持続すること」だという。

 檸檬堂は発売から1年がたつが、「定番化するには2~3年はかかる。いかに定番ブランドに育てるかはこれからのブランディングや商品開発にかかっているので、気を抜かずに育てていきたい」(和佐氏)。

 「学生時代、ラッキーストライクなどを手掛けた産業デザイナー、レイモンド・ローウィに憧れた。もし、マーケティングにキャリアを託すなら1度でいいからアイコニックな定番ブランドを作ってみたいと夢見ていた。実現は難しいと思うが、檸檬堂がそうなってくれたらいいという思いがある」と締めくくった。

和佐氏(右)とモデレーターを務めた日経クロストレンドの佐藤央明副編集長
和佐氏(右)とモデレーターを務めた日経クロストレンドの佐藤央明副編集長
関連リンク
  • 「日経クロストレンドFORUM2020」セッション一覧はこちら