withコロナで生活やビジネスは大きく変わりつつある。その新潮流を探るため、ベンチャーキャピタル(VC)を訪ねる連載。第4回は、コンシューマー向けサービスに強い朝日メディアラボベンチャーズの投資担当ディレクター、山田正美氏に聞いた。“ポストTikTok”に加え、女性の課題解決に特化したサービスにも注目だ。

山田 正美 氏
朝日メディアラボベンチャーズ 投資担当ディレクター
2001年朝日新聞社に入社し、07年からデジタル事業部門でサーバーサイドのエンジニアを務める。13年に新規事業部門であるメディアラボでベンチャー投資をスタート。現在は朝日メディアラボベンチャーズ、投資担当ディレクター

――コロナ禍での消費者の動きを捉えた、もしくは2021年に向けて注目の領域は。

山田正美氏(以下、山田氏) まずは、「Zoom」などのオンラインツールに関連する領域です。従来、一部の人たちが主にビジネス用途で使ってきたこうしたツールが、欠かせないインフラとして認知されました。過去の例でいえば、皆がスマホを手にしたときと状況が似ていて、ガラケーからのシフトが起こったように、大きな潮流が生まれています。21年以降も引き続き伸びると考えています。

 加えて、顕在化したのが、行政のデジタル化の遅れです。マイナンバーや電子申請がなかなか広がらず、はんこや紙の書類の文化もいまだ根強く残っています。コロナ禍を受け、行政を一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)化しようとする動きが、日本でもようやく本格的に動き始めました。Government(政府)+Technology(技術)の造語、“GovTech”と呼ばれる領域を狙うベンチャーも増えており、今後の伸長が期待できます。

 従来、なかなか変革が起きにくかった診療や薬局なども大きく動き始めています。遠隔診療の一般化も大きなトレンドですが、薬局のオンライン化にも注目しています。例えば、ミナカラ(東京・千代田)のオンライン特化型の薬局サービス「minacolor(ミナカラ)」は、新型コロナウイルスへの感染を懸念して薬局に行くのを躊躇(ちゅうちょ)するケースも見られる中、利用者を増やしています。一般用医薬品(市販薬)をECで販売したり、オンライン診療を受けた患者に処方薬を配達したりするのはもちろん、薬剤師とLINEのチャットで使用中の薬について相談ができるなど、アフターケアが充実している点が特徴。医薬品メーカーと提携して自社ブランド(PB)商品の開発も積極的に行っています。

オンライン薬局「ミナカラ」のサイトには、薬剤師が監修したコンテンツを用意。LINEを使ったチャットによる相談も受け付けている。また、オンライン服薬指導にも対応
オンライン薬局「ミナカラ」のサイトには、薬剤師が監修したコンテンツを用意。LINEを使ったチャットによる相談も受け付けている。また、オンライン服薬指導にも対応

 大手物流会社と提携し、物流センター内に自社の倉庫兼薬局を設置することで、デリバリーのスピード化・効率化を図り、オンライン前提のビジネスモデルの構築を推進。その拠点は自社で使うだけでなく、全国の薬局のオンライン支援にも活用する計画で、医薬品業界のバリューチェーンのうち、デリバリー分野のDX化を図ることを目指しています。

――コロナ禍では人々が生活スタイルを見直す動きも顕在化しています。

山田氏 大きな変化は、住む場所に対する意識です。リモートワークの普及で出社が不要になり、会社の近くに住む意味が希薄になってきています。自由に居住地を選んだり、定住せずに住む場所を変えたりするニーズも見られます。そうした変化を捉えたサービスが、NOW ROOM(ナウルーム、東京・渋谷)が提供する、空き室と利用者のマッチングサービス「NOW ROOM」。初期費用ゼロで1カ月単位(20年12月に7泊8日のウィークリープランの提供もスタート)で家を借りられます。オンラインで内見や審査を行うことも可能で、20年5月のリリースから、既に2万5000人以上が利用登録をしています。アドレス(東京・千代田)が提供する、月額4万円(税別)で全国100カ所以上の施設に予約して居住できる住み放題サブスクサービス「ADDress(アドレス)」も、今どきのニーズを捉えて注目されています。

ナウルームは2020年5月にアプリをリリース。掲載部屋の総数は、半年で2万室を突破している
ナウルームは2020年5月にアプリをリリース。掲載部屋の総数は、半年で2万室を突破している

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