「SDGs(持続可能な開発目標)」や「ソーシャルグッド(社会に対して良いインパクトを与える活動や製品、サービスの総称)」とともに、注目が集まっている「パーパス(存在意義)」。ブランドはパーパスとどう向き合い、体現していけばよいのか。ブランドの責任者として、パーパスブランディングに携わる花王ホームケア事業部ブランドマネージャーの佐鳥翼氏と、キリンビバレッジのブランド担当主査シニアブランドマネージャー(※イベント登壇時)加藤麻里子氏が解説。モデレーターは、パーパスブランディングの観点で10年ほど企業支援を行っているエスエムオー(東京・港)の齊藤三希子氏が務めた。
齊藤三希子(エスエムオー、以下齊藤) まず私からパーパスについて説明します。パーパスとは「存在意義」を意味し、「何のために自分たちが存在するのか」を明文化したものです。そして、企業や組織、ブランドの根幹であり、よりどころとなるパーパスを見つけ、判断や行動の指針として課題を解決すること。これがパーパスブランディングです。では、実践するにはどうすればよいのか。ここからは事例を踏まえて、より具体的に見ていきましょう。
ブランドに対する共感の醸成に取り組む「クイックル」
佐鳥翼(花王、以下佐鳥) 花王が販売している掃除用品の「クイックル」は、「誰もが生活空間を手軽に整えて、自分らしい生活を楽しみ続けられる社会へ」というパーパスの下、2019年からパーパスブランディングに取り組んでいます。
実際に施策を始めたのは21年秋。パーパスプロジェクトの始動を告げるプレスリリースの配信を皮切りに、ライフスタイルや子育て系のメディアと組んで施策を展開していきました。また、商品企画ではクイックルシリーズのアソート品を用意。通販サイト「LOHACO(ロハコ)」での販売、Twitter上でのプレゼントキャンペーンのほか、店頭の棚全面を使いクイックルシリーズを総合展開するプロモーションを実施しました。
パーパスの実行フェーズで意識したのは、スモールスタートです。生活者の反応を見ながら改善を図り、その後WebやテレビCMでブランディング広告を配信する形としました。ブランディング広告で意識したのは共感性です。テレビCMでは実際の家族3組に出演いただき、自宅で楽しく掃除する姿から、クイックルが身近にある暮らしがどんなものか自然に描き出しました。
取り組みの結果、「ブランド共感度」「好意度」「購入意向」が、施策前と比べて7~9%上昇。反応率の低かった「いつでも気軽に掃除できる」「手間や時間を省ける」「いろいろな場所に使える」といったブランドイメージの項目も1.5倍に伸びました。また、新型コロナウイルス禍で掃除市場が拡大した20年度の実績を超えるのは難しかった中、1人あたりの購入回数や購入個数が0.5~3%増え、日常使いやシリーズ併用の拡大が見えてきました。
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