近年、販売を主目的としないショールーミング型の「売らない店」の出店ラッシュが続いている。なぜ小売り各社からの参入が相次いでいるのか。また、激しい競争を勝ち抜くため各社はどのように差別化を図っているのか。先駆者の「b8ta(ベータ)」と、今後、国内外あわせて10店舗の売らない店を出店検討しているという高島屋のキーパーソンが、売らない店に成功法則はあるのか議論した。
(本稿は、2022年7月20日に実施した日経クロストレンド・カレッジ「『売らない店』は定着するか? b8ta、高島屋が激論」の一部を抜粋したものです。放映後に視聴者から両者に寄せられた質問への回答は、下記の記事をご参照ください。)
▼関連記事 b8ta、高島屋 「売らない店」の責任者が視聴者の疑問に回答「売らない店」とは、主に販売を主目的としない小売りを指す。従来の小売業は店頭で商品を販売することで収益を得てきた。一方売らない店は、商品を展示する区画や接客を代行する販売員、また店内で取得した様々な定量・定性データを出展企業に還元することで月額出展料を得る。そのため、必ずしも商品を販売しなくても収益を得られるビジネスモデルとなっている。
「売らない店」と呼称されるものの、高島屋が展開する「Meetz STORE(ミーツ・ストア)」のように、店頭に在庫は抱えないが、売ることを重視する(専用ECサイトを設け、店内からECサイトを経由して購入できる)店も増えてきており、何を目的とするかは企業によって異なる。
データの取得に当たっては、多くの売らない店が、店内に設置したAI(人工知能)カメラを活用している。同カメラで取得した定量データに加え、販売員が来店客との対話から得た定性データを提供するのだ。こうしたビジネスモデルを総称して、RaaS(リテール・アズ・ア・サービス)と呼ぶ。
売らない店の先駆けである、b8taの運営を手掛けるベータ・ジャパン(東京・千代田)と、大手百貨店による参入として注目を集める高島屋のMeetz STOREの事業責任者が語る、売らない店の勝ち筋とは?
ショールーミング型店舗事業に百貨店が進出した訳
ベータ・ジャパンの北川氏は、b8taの特長について、「商品との偶然の出合いや、新たな発見の機会を提供できること。購入を迫られるプレッシャーを受けずに、来店客が自分のペースでショッピングを楽しめる」と説明する。
売らない店に出展(出品)する企業の利用動機を分けると、大きく、「売り上げ増」「宣伝広告」「テストマーケティング」の3つに分類される。
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