実践! ファンベース

日経クロストレンドは2020年10月27日に有料セミナー「日経クロストレンド・カレッジ ファンベース実践『はじめの一歩』」をオンラインで実施した。ファンベースカンパニーの佐藤尚之氏、津田匡保氏が登壇、ファンベースに取り組むときの「考え方」や「実践方法」について解説した。ここでは本特集の番外編(前編)として、カレッジ参加者から当日寄せられた質問に津田氏が回答する。

2020年10月27日に実施した有料セミナー「日経クロストレンド・カレッジ ファンベース実践『はじめの一歩』」。ファンベースカンパニーの佐藤尚之氏(写真右)、津田匡保氏が登壇した
2020年10月27日に実施した有料セミナー「日経クロストレンド・カレッジ ファンベース実践『はじめの一歩』」。ファンベースカンパニーの佐藤尚之氏(写真右)、津田匡保氏が登壇した

前回(第9回)はこちら

ファンベース診断に関する質問

「ファンベース診断」を活用するには、最低でもどれくらいの人数を対象にするといいのでしょうか。また、回答者全体の統括だけではなく、ファンがどんな感情を持っているかを深掘りすることはできますか

ファンベース診断(詳細はこちら )の目的は、企業の顧客の傾向やファン度の分布を見ることです。そのため、広く回答を募ったほうが全体を把握しやすくなります。会員が1万人いるなら、その全員に診断用のメールを送ってください。SNSのフォロワーでも構いませんが、回答人数は多ければ多いほうがいいです。少なくとも200人は集めるようにしてください。テンプレートの設問をそのまま使うだけでなく、自分たちが感じている課題を入れたり、自由に回答できる欄を設けたりしてファンの気持ちを深掘りすることもできます。また、社内向け、企業の中の人たちのファン度を調べていく「社内ファンベース診断」も2021年中のリリースに向けて開発中です。

 ただ、ファンベース診断はいわゆる人間ドックのようなものだと思ってください。分かるのはファンの傾向と大まかな今後の課題です。大事なのはここでコアなファンを見つけること。その後はリアルやオンラインでのミーティングを設けてコアファンの話を傾聴して、その結果からコアファンが喜び、共に成長していける施策を立てる必要があります。

「ファン」とはどんな人?

ファンベース診断を行う際は「特定の製品」「ブランド」「企業」のうち、どこに対象を絞るべきでしょうか

ファンベースが考えるファンの定義は、企業が大事にしている価値を大事にしてくれる人。だからブランド単体でも企業単体でも診断できます。最終的には企業全体のファンになってもらうのが目的でも、まずはブランドや製品のファンになってもらうのが第一歩かもしれません。企業によってはブランド名だけが表に出てしまって企業名のイメージが湧きにくいところもあるからです。

ファンの「好き」以外の感情を見抜くにはどうしたらいいでしょうか

ファンは好き以外にもいろんな感情を持っています。「この商品を買い続けたい」という継続意向や「友達にも薦めたい」という推奨意向も1つの感情です。これらの感情が「好き」とどうリンクしていくのかも分析する必要があります。また、好きという気持ちも分解していくと、熱狂や共感などさまざまな要素があるのが分かります。単に好きか嫌いかではなく、ファンベース診断などでファンの感情の傾向を可視化していくことから始めることをお勧めします。

BtoB企業でもファンベースは有効か

自社はBtoB企業なので、BtoC企業のファンベースとはやり方が違う気がして、どう実践したらいいのか迷います

結論からいうと、BtoBにもファンベースは有効です。例えば会社のシステムを入れ替える際も、つながりのある他社のシステム担当者の方に相談して、評判を聞いてから導入することもあるでしょう。BtoCは生活者の話を聞きますが、BtoBなら企業の中の人の話を聞けばいいのです。どちらも人の感情を扱うという点では同じです。

 でも、個人的にはBやCと分けることに意味はないと思っています。自分たちの仕事はBtoBだと割り切ってしまって、生活者のことを考えるのを諦めていませんか? どんな企業でも、最終的には生活者の言葉、気持ちを考えることが重要であると思います。

メーカーではなく、「完成品を仕入れて売る」会社でもファンベースはできますか

できるかどうかを考えるよりも、「やりたいのかどうか」と考えたほうがいいと思います。他社が製造した商品を扱うとはいえ、自分たちの目利きで集めているはず。そう考えると、セレクトショップにファンがつくのと同じだと思います。何のために自分たちの会社が存在しているのかを打ち出すことで、その企業を取り巻く人をファンにすることができます。

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