熱烈ファンの手でサービスが自走する mineoの実践ファンベース(画像)

格安スマホの「mineo(マイネオ)」でファンベースを実践してきた上田晃穂氏。ファンベースに取り組んできた背景と具体的な施策の数々を、ファンベースカンパニー社長の津田匡保氏が聞く。

mineoが展開するコミュニティーサイト「マイネ王」
mineoが展開するコミュニティーサイト「マイネ王」

mineo漫画編(特集第5回)はこちら

※本インタビューは、書籍『ファンベースなひとたち』(2020年11月6日発売、日経BP)掲載分を一部改編・加筆したものです。
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津田匡保氏(以下、津田) mineo(マイネオ)は格安スマートフォン、格安SIMのブランド。通信サービスのように生活に欠かせないインフラ分野でも、ファンベースを実践できるという好事例です。

上田晃穂氏(以下、上田) 私は2016年7月から3年間、関西電力の通信子会社であるケイ・オプティコム(現オプテージ)に出向して、mineoの責任者を務めました。MVNO(仮想移動体通信事業者)といわれる格安スマホのサービス事業者は、国内でざっと1000社以上。MVNOは、大手キャリアに比べて設備投資や店舗運営費がかからないために通信料を安く提供できるのが売りですが、料金だけで勝負していると他社サービスとの差別化はできません。そこで、mineoはファンと共創するという独自性を出し、オンリーワンのブランドを目指してきました。

 私が就任した当時で、MVNO市場でのmineoのシェアは5%ほど。それを3年間で9%まで伸ばしました。そもそも、スマホ市場全体の9割をNTTドコモ、au、ソフトバンクの大手3社が占めており、MVNOのシェアはわずか10%程度といわれます。そんな中で大きく成長できたのは、本当に選んでくれたユーザーのみなさんのおかげだと感謝しています。

【特集】実践! ファンベース
【第1回】 ファンに寄り添う「トヨタイムズ」の価値訴求 徳力基彦×津田匡保
【第2回】 大ヒット『鬼滅の刃』に見るファンベース思考 徳力×津田対談後編
【第3回】 [漫画編]ネスカフェ アンバサダー ファンを起点に急成⻑のワケ
【第4回】 さとなお氏が聞く ネスレの成功に見る新規事業とファンベースの肝
【第5回】 [漫画編]安さだけじゃない! mineoファンが共感した社会的価値とは?
【第6回】 熱烈ファンの手でサービスが自走する mineoの実践ファンベース ←今回はココ
【第7回】 [漫画編]多拠点生活サービスのADDress ファンを増やした「情緒価値」(11月13日公開)
【第8回】 ADDressに学ぶ ファン参加の極意は「あえて『隙』をつくる」こと(11月13日公開)
【第9回】 「ファンであることに自信を」 セガ公式Twitterのつながる力 (11月13日公開)

津田 mineo責任者として、顧客満足度を高めるために、どんなことから始めたのですか?

上田 まずは、ブランドステートメントの「Fun with Fans!=楽しみながらファンと一緒に新しいサービス、コミュニティー、未来を創る」の浸透を図りました。サービスが大きくなったりメンバーが代わったりすると、知らず知らずのうちに方向性が変わってしまう危険性があります。そこでmineoとファンとの関係をブランドステートメントや行動指針として明文化することで、軸がぶれないようにしました。

 同時にmineoのサービスとしての価値を考えて、それを機能的価値、情緒的価値、社会的価値とピラミッドのように積み上げました。機能的価値としては、利便性と品質が挙げられます。例えば、品質を可視化するために、mineoでは通信速度を時間ごとにお天気マークで表示しています。これを取り入れたのは、「格安スマホは日中の通信速度が遅い」というイメージがあるから。できるだけ通信速度を分かりやすく示したいと思い、ネットの24時間天気予報を参考に時間帯別の速度を表示しました。格安スマホの業界でも、これをやっているのはmineoだけです。

 また、ユーザーの生の声もレビューとして表示しています。我々は、たとえ星1つという低評価でも非表示にはしません。検討している人が、その辛口のレビューを見てどこがネックなのかも参考にしてほしいからです。

津田 すごく誠実な姿勢ですね。情緒的価値を上げる施策にはどんなものがありますか?

上田 ユーザーのためのコミュニティーサイト「マイネ王」でのコミュニケーションです。15年1月に立ち上げ、私が就任してからさらに内容を強化しました。サイト内にはスタッフブログやアイデア ファームなど9つのコンテンツがあります。スタッフブログにはmineoの担当者が持ち回りで記事を書いていますが、サービス情報だけではなく、その裏に込めた思いもつづるようにしています。

 また、ユーザーがコメントを書き込むこともでき、交流の場となっています。さらに、スタッフブログと銘打っていますが、ユーザーさんにお願いして記事を書いてもらうこともあるんです。例えば、スマホに詳しいユーザーさんに、「スマホを買うときのチェックポイント」や「電話サービス」に関する記事を書いてもらいました。

津田 コミュニティーサイトが盛り上がると、リアルの場でファンイベントをやろうという話になりませんか?

上田 そうですね。「オフ会」は全国各地でこれまでに30回以上実施しました。各回10~20人を招待して、mineoの現状や今後についてディスカッションしてもらいました。未発表のサービスについて意見を聞いたこともあります。「ファンの集い」はオフ会より規模を大きくして、最大100人を招待してmineoに関するクイズ大会も行いました。いずれのイベントも交通費はユーザーの負担となりますが、毎回遠方から参加してくれる人もいます。

mineoが開催したファンの集いの模様。スタッフの説明にファンが熱心に聞き入る
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