エグゼクティブサーチ会社「ハイドリック&ストラグルズ」日本オフィスで活躍する渡辺紀子氏が、21世紀を勝ち抜く「異能のキャリア」を紹介するシリーズ。第6回に登場するのは、NTTのイントレプレナー(企業内起業家)として、教育事業を手がけるドコモgacco(東京・港)の社長などを歴任し、現在はTEPCOグループの新事業開発担当取締役を務めながら、複数の上場会社の社外取締役や仲間と起業したイントレプレナー育成の会社の取締役としても活躍する伊能美和子氏だ。
TEPCOライフサービス取締役
伊能さんとは共通の知り合いを通じてつながりました。NTTというクラシックな日本の会社にいながら新しいことばかりやってこられた。20年に同社を離れた後も、やはりインフラを担うTEPCOグループ子会社の取締役として、また学研などの社外取締役としてパラレルキャリアを追求しています。新しい時代の働き方のモデルとして注目してきました。仕事着として和服を着こなし、とてもおしゃれなところにも感心しています。だから、和装も含め総合的に美容サービスを展開するヤマノホールディングスにおつなぎしました。いったい1日24時間をどう時間配分しているのか…。ともかく多才で多彩な人です。
渡辺さんには伊能さんのNTTドコモでの元部下の方もお世話になったそうですね。
「ええ。偶然なんですが、彼が渡辺さんを評して言っていたのは『豪腕』とか『辣腕』といった形容詞。でも私が感じたのは、よく当たる占師みたいだなと(笑)。著名な経営者を含め、いろんな方とお知り合いで、人を見る目は当然お持ち。男性が多いエグゼクティブサーチの世界で女の人は少数派ですが、その中には何となく女性の役割をどこか決めているように見える方もいます。でも、渡辺さんは向いてない仕事はやめろとはっきり言う(笑)。私もそう言われました。もちろん百発百中ではないと思いますが、そう言ってくれるのはむしろありがたい」
NTTグループから外に出られたとき、当初は戸惑いもあったかとお察しします。
「入社直後の集合研修で、同期入社の仲間から一番最初に辞めそうと言われたのに、結局32年もの長きにわたりお世話になりました。その間、グループの中で何度も転籍や出向を経験しましたけれど、自ら外部と関わりのある部署で働くのを希望し、かなえられてきた結果です。私はもともと縦串より横串タイプであることを自任していて、複数のステークホルダーと共に市場と向き合い、共通の社会課題を解決するような仕事がしたかった。それにはある程度、規模が大きくないと無理だと思ってNTTを選んだんです。現場研修が終わった後配属されたのが首都圏エリアの広報宣伝を担当する部署。その後、希望して出向したのが、もうなくなりましたが電通、ぴあとの共同出資会社NTTメディアスコープ(後にNTTアドに吸収合併)で、顧客先企業や省庁のPRやブランディングなどを担当しました。ちなみに、そこで同様にNTTから派遣されていた夫とも出会いましたし…」
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