エグゼクティブサーチ会社「ハイドリック&ストラグルズ」日本オフィスで活躍する渡辺紀子氏が、聞き役として、21世紀を勝ち抜く「異能のキャリア」を紹介する。第1回は経済産業省の技術系官僚として将来を期待されながら、民間へと転身したロート製薬CEO付兼未来社会デザイン室長の荒木健史氏だ。通常のビジネスパーソンとはやや異なる異能のキャリアから、自分の今後のキャリア形成について学んでほしい。
ロート製薬 CEO付兼未来社会デザイン室長
内閣府宇宙政策委員会・専門委員、産業総合技術研究所・研究支援アドバイザー、宇宙航空研究開発機構・客員、マゼランシステムズジャパン顧問、スペース・バイオ・ラボラトリーズ顧問など
私は毎月200人以上の方々と面談をしていますが、この連載でご紹介する人たちの多くは、個人的にお会いし、「働く組織や枠にとらわれず、その人らしい生き方を貫いている。どこであっても能力を発揮し、活躍できる」と思えた方たちです。
荒木さんとは、共通の関心事のある会合で出会い、初対面で「この人は違う」と感じた瞬間を今でも覚えています。それだけユニークで、“異能”の名にふさわしい方です。
何より官僚時代の経歴が豊富。2004年に経済産業省に入省後、自動車・航空機・防衛分野といった主要部署に従事し、14年には内閣府宇宙戦略室に出向し、準天頂衛星システムの開発・整備・利活用も担当しました。お会いした当初から、ともかくエネルギッシュに前へと突き進む人という印象を受けました。しかし、走りながらでも考えを的確にまとめられる。それだけ頭の回転も速いのです。成長多角化企業の次世代事業を創成し、スピード感を持って推進されています。 荒木さんがそのユニークネスをいかに培ってきたかにぜひ注視してください。
終身雇用制が解体した現在、多くの人々に転職の機会は訪れる。人はいかにして職業でキャリアを築き、自らの人生を豊かにしていけるのか? 経産省から民間への在任中の転職の例は、他の官庁に比べれば多い。しかし、なんで転職を考え、実行に移したかがまず気になる。
「経産省に入省して最も良かったと思う部分として、マクロ感を養えたことがある一方、ラストワンマイルのところは、どうしても企業など民間に委ねるしかないもどかしさがありました。他方、民間側の立場で眺めてみますと、ミクロ感はすごく強い一方、マクロ感が逆に弱い傾向にありますので、行政と企業の双方を経験することが重要と思い、転職を決めました。ロート製薬に移ったのが2018年の7月。すでに2年になりますが、日本人全員が官民双方を経験できると、相当強い国になると実感してますね」
経産省で歩んできたのはまず通商政策局地域協力課(現:経済連携課)、次いで自動車課、さらには環境政策課、そして航空機武器宇宙産業課、内閣府への出向の後は国際経済課……まるで製薬業界と接点がないように見えるが?
「現在のロート製薬の会長にお会いする機会がたまたまあったんです。お会いしたのは3年ほど前ですが、それ以前に、会長が『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)に出演された内容が印象的でした。番組を見て、役所と違って組織がフラット化され、意思決定も早いと強く感じました。その印象を持ちながら、直接お話ができた機会を奇縁に感じましたね。その後、省内で事務手続きを終え、転職するまではかなり急でした」
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