前回の記事では、DX(デジタルトランスフォーメーション)がうまく進まない企業の共通点について説明した。では、DXを進めづらい傾向がある規模の大きな企業などでは、どうデジタル化を進めるのか。多数の事業開発の経験を持つコンサルタント、岡村直人氏がその処方箋を解説する。

大企業がDXや新規事業を立ち上げ、軌道に乗せるには、小さなプロジェクトに分割して考えるのが有効だ(写真/Shutterstock)
大企業がDXや新規事業を立ち上げ、軌道に乗せるには、小さなプロジェクトに分割して考えるのが有効だ(写真/Shutterstock)

 大企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)をスタートする際など、そのスケールが大きく影響範囲が広いためにどう手を付けたらよいのか分からない、という方もいるのではないでしょうか。

 具体的にDX推進計画を作るためには、実行可能な解像度まで計画をブレークダウンし、また経営層が意思決定しやすいようにリスクや影響範囲を限定してあげる必要があります。今回は、そのために有効と思われる、2つのアプローチを紹介します。

大きなリスクを、小さなリスクに分割する

 DXや新規事業でよく見られる処方箋として、いわゆる「スモールスタート」があります。

 「大きな投資は怖いので、まずは失敗しても痛くない規模でやってみよう」ということですが、間違った運用をしている企業も見受けられます。その間違いは、リスクを小さくするために単に予算を小さくするというものです。

 私が過去に携わってきたプロジェクトでも、現場に対して「3年後に売り上げ10億円へと成長する新規事業を立ち上げよ。ただし、予算は3000万円以内」というような経営からのオーダーを何度か目にしました。これを達成するためには早期に営業黒字を達成し、利益を再投資する計画を立てざるを得ません。ところが、シェアを極大化するためにマネタイズを遅らせる「最大化戦略」や、キャッシュインが後ろ倒しになるサブスクリプションモデルといった手法とは相性が悪く、現実離れした計画になってしまいがちです。

 スモールスタートは「大きなチャレンジをチームが1年程度で達成可能な小さなプロジェクトに分割し、フェーズごとに予算を設定する」という考え方にすると計画が作りやすく、事業運営も進めやすくなります。

 分割の仕方には、大きく2パターンあります。1つが「マイルストーン(中間の目標点)で分割」、もう1つが「サービスで分割」です。

 (1)大きな投資をマイルストーンで分割 

 大きな投資をマイルストーンで分割するケースで一番多いのは、事業開発だと思います。事業開発は数年がかりのプロジェクトになりますし、累積での投資額も膨らみやすくなります。一方で、最初からその総額を決済することは簡単ではないため、「いつまでに、ここまで達成したら続けていいよ」というマイルストーンを経営陣と合意して進めていくことになります。

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