DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む企業は、顧客体験の変革を目指す前に、ネットとリアルの両面から事業を見直し、欠けている組織能力を補う必要がある。認知獲得後の選定突破フェーズには何が重要なのか。多数の事業開発の経験を持つコンサルタント、岡村直人氏が指南する。
第13回以降、デジタル化が遅れている部分を把握するためにマーケティングファネルを用いて顧客体験全体を俯瞰(ふかん)する方法を紹介してきました。今回は認知獲得後の「選定突破」のフェーズを見ていきましょう。
今回もデジタル化についてのチェックリストを確認するところから始めていきましょう。内容として、しっくりとこない部分があった場合でも、いったん気にせず、記事を読み終わった後で改めてチェックしてみてください。
- 見込み客や見込み案件をデータベース化し、定量的に管理している
- 営業部門とマーケティング部門が一元化されたプロセスで同じ目標を追っている
- リアルとオンラインの施策が統合的にマネジメントされている
- マーケティングチャネルごとの効率性が定量化されて比較できている
- データを基に顧客コミュニケーションの最適なコストアロケーション(コスト負担)を実施できている
高価な商品ほど選定期間が長い
改めて説明すると、マーケティングファネルにおける「選定突破」は、製品やサービスの認知を得た後に、購買・成約に至るまでのプロセスです。顧客の立場から見れば「なぜその製品(サービス)を購入しなければならないのか?」という問いに、自分なりの答えを出す過程と言えます。
例えば、スーパーの家電売り場である新製品を初めて見たとします(認知)。その製品のパッケージやキャッチコピー、POP(店頭販促)などで興味を引かれ、手に取って詳しく見て、これまで買っていた製品から乗り換えるかを考えます。また、別の機会に友人とその商品の話をするかもしれません。比較サイトや口コミサイトで違いやレビューを見るかもしれません。そのような、製品サービスが自分にとって必要かどうかを吟味するプロセスを他の競合や買わない選択肢と戦って勝ち抜くのが「選定突破」プロセスになります。
低単価商材ほど吟味のプロセスは短く、日用品などは一瞬で判断されます。一方、ブランドバッグや自動車、マンションなど、高価になればなるほど選定期間(リードタイム)は長くなる傾向にあります。
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