「取りあえず考えてよ」と現場に言うだけでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)は進まない。本質的に変革し、成果を上げるには組織の仕組みから変える必要がある。具体的にどう構築するのか。多数の事業開発の経験を持つコンサルタント、岡村直人氏がDXビジネス立ち上げの勘所を解説する。
前回の記事では、DXに際して予算取りの重要性や、社内のコンセンサス形成に当たっては対立を避けるために目線を上げることなどをお話ししました。今回はDXに際しての組織作りについてお話ししたいと思います。
DXの組織作りは4パターン
予算のめどがついたら、次は組織作りに取り掛かります。DXに向けての組織作りにはいくつかのパターンがあり、その組み合わせで実行されます。部分的にスタートし、最終的には組織全体をデジタルスタンダードにするというのがゴールです。
筆者自身の経験と、事業会社DX担当者やコンサル仲間などに聞く限りでは、典型的な組織形態として上図のような4パターンがあります。それぞれについて、メリットやデメリット、組織の運営に当たっての留意点を紹介していきましょう。
(1)全社管掌型のDX組織
全社のDXを専門の部署が管掌する形態です。事業部やその他の間接部門に属さないことで、既存部門のしがらみや政治からある程度距離を置いた意思決定ができることが特徴で、客観的な目線から全体最適の視点でDXを検討することができます。同様の立ち位置である経営企画室や社長室などの部門がその機能を担ったり、分派したりして発生することも多いでしょう。
・メリット
- 既存部門の利害関係と独立した意思決定ができる
- 俯瞰(ふかん)的に全体最適を検討しやすい
・デメリット
- しがらみがないが故に理想論や地に足の着いていない計画になることも少なくなく、実行フェーズで事業部門から現場の反発に遭い計画倒れとなることも
- 事業部の後ろ盾がないと予算が小さくなりやすく、社内でリーダーシップを発揮できない
「変革」という、ある種の自己否定を伴う進化には客観性が必要です。その意味で、事業部から独立した全社管掌型組織は計画立案において一定の合理性があると思われます。
問題は実行フェーズで、強いリーダーシップを発揮し、しっかりと現場を巻き込むことができるかになります。その意味では、企画段階から現場とのコミュニケーションを密に行い、情報収集を行いつつも、実行フェーズを見据えたネゴシエーションを並行できるようなしたたかな立ち回りが求められるでしょう。
外部コンサルを招いてデザインシンキングや企画のアウトソースなどを行うケースも多いと思いますが、企業のプロパー代表として関係各部署の意見・知見をしっかりと吸い上げ調整を行い続ける高度なビジネスコミュニケーションが必要です。
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