「あなたの会社ではどんなDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していますか」。そんな質問をうけた時、お互いが考えているDXの定義がずれていたら、会話がかみ合わない。多数の事業開発の経験を持つコンサルタント岡村直人氏が、業界の違いによるDXの解釈の違いについて説明する。
DXは2018年ころから使われるようになった新しい言葉で、使われるシーンや文脈によって捉え方は様々です。本連載ではDXを3つに分類し「広義のDX」「狭義のDX」について説明してきました。今回はもっとも狭い「自社の取り組みとしてのDX」について触れていきます。
DXの現実は千差万別
「自社の取り組みとしてのDX」は、当然ながら当事者となる企業によって何を意味するのかが千差万別です。同業など、前提となる市場環境が共有できる企業同士であれば意味が通じるでしょうが、そうでない場合は解釈の齟齬(そご)が生じます。
イメージをつかんでいただくために、よく耳にするデジタル化のトレンドワードと、産業の適合度をまとめました。業界によって、カバー分野が全く違うことが分かると思います。この表はあくまで参考ですが、言いたいことは「企業の置かれている環境によって、DXといっても全く違うものを意味する」ということです。
製造業のDXはインダストリー4.0が中核
例えば製造業では、DXにおける関心テーマとしてERP(統合基幹業務システム)やインダストリー4.0、IoTなどが挙がってきます。
インダストリー4.0は第4次産業革命と呼ばれるもので、2013年4月にドイツが打ち出したコンセプトです。政府、企業、大学や研究所が合同でプロジェクトチームを組成し、国を挙げて取り組むと宣言しました。
ものづくりのスマート化、デジタル化を、大企業だけではなく、中小企業まで含める形で推し進める姿勢を打ち出し、莫大な経済効果をもたらすと言われています。産業界では、このインダストリー4.0の延長線上にDXの中核があると考えてよいでしょう。
第3次産業革命におけるIT/ハイテク利用との違いはCPS(サイバー・フィジカル・システム)と言われる、物理的な製造現場のセンサー/機器類と、サーバーサイドでのAI(人工知能)/機械学習によるデータ連動です。物理空間とインターネット上のサイバー空間がリアルタイムに連動することからデジタルツインとも呼ばれます。
物理情報のデータ化と、収集したデータの分析を通じて、第3次産業革命までのような単なる生産ラインの自動化だけでなく、システムによる生産量の予測や供給量の最適化、製品の個別最適化などを通じて生産性の最大化を目指すものです。
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