多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指す理由には、海外のIT系企業があらゆるサービスをプラットフォーム化し、主導権を奪ってしまう、という懸念がある。多数の事業開発の経験を持つコンサルタント、岡村直人氏は特に「消費者向けサービス」などの緊急度が高いと説明する。

DXが広がる背景には、GAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック、アップル、マイクロソフト)などによるデジタルディスラプションへの脅威もある(写真提供/Shutterstock)
DXが広がる背景には、GAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック、アップル、マイクロソフト)などによるデジタルディスラプションへの脅威もある(写真提供/Shutterstock)

 前回までに国内企業は老朽化した基幹システムへの対応を迫られており、その対策として経済産業省が提示した「DXレポート」「DX推進指標」について説明しました。ところで、連載の第2回で「狭義のDX」は以下2つの観点があるとお伝えしたことを覚えていらっしゃいますでしょうか。

①1990年代~2000年代に構築した基幹システムの老朽化や、複雑化といった技術負債にどう対処するかといった情報システムの刷新

②米アマゾン・ドット・コムや米グーグルのようなIT系企業が小売りや自動車産業などの伝統的産業にまで参入し、競争環境を激変させるデジタルディスラプションへどう対応するかというデジタル経営戦略

 「DXレポート」「DX推進指標」における基幹システム老朽化や技術負債の返済という観点は前者に当たる部分でした。今回の記事では後者について説明していきたいと思います。

緊急度が高いのは「消費者向けサービス」

 ビジネスの最前線で活躍している読者の皆さんには改めて説明するまでもなく、GAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック、アップル、マイクロソフト)をはじめとする米国IT系企業の躍進には目を見張るものがあります。2010年以降、GAFAMの時価総額は10倍近くとなり、今では東証1部約2170社の合計を上回ったとされています。

 そのようなIT企業が勢力を伸ばす傍ら、歴史ある伝統企業と市場シェア争いを繰り広げるようになってきました。デジタルテクノロジーによってこれまでの産業構造や競争力が変わってしまい、市場で圧倒的優位を誇っていた企業がデジタル企業に大きくシェアを奪われることを「デジタルディスラプション」といいます。

デジタルディスラプションとDXの緊急度
デジタルディスラプションとDXの緊急度
一般消費者や顧客向けのサービス分野は、デジタルディスラプションの脅威が迫り、DXの緊急度が高い。スイスの国際経営開発研究所(IMD)による「デジタルディスラプション発生可能性が高い業界」のリポートを基に筆者が分類した

 どのような分野で影響が大きいのか、上図にまとめてみました。デジタルディスラプションからの脅威から遠いといわれているのは、製薬のような研究開発力と知的財産を持つ業界あるいは石油・ガスのような天然資源に競争力の源泉を求める業界です。

 特に「脅威が迫っている」といえるのは、一般消費者や顧客向けのサービスや利便性によって差別化を図っていく分野です。デジタル化によって流通やサービスの質の変化が起こり、競争力のあり方が大きく変わってしまうからです。例えばモノの所有権を売っていたビジネスが、サブスクリプションのように「効用」や「体験」そのものを売るビジネスにシェアを奪われるといったようなことです。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>
3
この記事をいいね!する