DX(デジタルトランスフォーメーション)に関するリポートで「2025年の崖」の存在を示した経済産業省は、企業がDX推進のレベルを把握し、具体的な取り組みに生かすための「DX推進指標」を公表している。多数の事業開発の経験を持つコンサルタント、岡村直人氏がその指標の読み解き方、生かし方を解説する。
前回までに“広義のDX”は自動車や家電など一般生活者向けの幅広い商品やサービスを手掛けている企業や文脈での使われ方であること、そして“狭義のDX”は経済産業省などが推進を後押しするビジネス文脈のDXだと説明しました。さらに経済産業省の「DXレポート」を取り上げ「2025年の崖」や日本企業が解決すべき技術負債に触れました。
今回はDXレポートに続いて、経済産業省が2019年7月にまとめた「DX推進指標」について読み解いていきましょう。DX推進指標とは、DXの推進に向けた現状や課題を企業が認識するためのガイドラインといえるものです。抽象的で定量指標がいまひとつという部分もあるのですが、網羅性は高く有用であることは間違いありません。今回はこの指標について深掘りしていきたいと思います。
国内IT投資「価値創出」に伸び悩み
米国では2000年代以降、ソフトウエアやデータ、ノウハウを含む無形資産投資が設備や土地などの有形資産投資を上回っていると言われます。米国の国際競争力を維持強化する上で大きな支えとなっていることは疑う余地がありません。日本でも、米国には及ばないものの無形資産の投資比率が伸びています。
ただし、その投資の内容については多くの課題があると言われています。上図は企業の年度別IT予算配分です。ビジネスの付加価値創出や新規事業開発などに使われる「バリューアップ予算」が伸び悩み、既存システムの維持や管理に使われる「ラン・ザ・ビジネス予算」が依然として高い比率を維持しています。
DX推進指標で具体的な変革を促す
本来DXは、仕事の進め方だけでなく企業文化の変革まで求められるものです。市場や顧客といった「外」に向けた新しい付加価値の創出に向けた経営努力に取り組んでいかなければなりません。しかし、現実的には「多くの企業において、実証的な取り組みは行われるものの、実際のビジネスの変革にはつながっていない」と指摘されています。
こうした現状に対し、各企業が自己診断をすることで変革に向けた具体的なアクションを促し、後押しするためのガイドラインが経済産業省の「DX推進指標」です。
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