withコロナで社会構造が変わる中、ビジネス変革は待ったなし。業種や役職に関わらず、DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質を知ることはビジネスパーソンにとって必須となりつつある。自動車サブスクリプションやIT人材シェアなど多数の事業開発の経験を持つコンサルタント、岡村直人氏が解説する。

多彩なサービスを結びつける「広義のDX」と、社内の仕事を単にデジタル化する「狭義のDX」とは分けて考える必要がある
多彩なサービスを結びつける「広義のDX」と、社内の仕事を単にデジタル化する「狭義のDX」とは分けて考える必要がある

 菅義偉首相は肝煎りの政策として「デジタル庁」の創設に向けた準備を進めています。国家を挙げてDXを推進するという姿勢を示したもので、「脱ハンコ」などの方針を打ち出しています。ほかにも日本経済新聞は2020年10月20日付けで、政府・与党が21年度税制改正でDXを進める企業への税制優遇策を検討すると伝えています。経済産業省と東京証券取引所が20年8月に共同で発表した「DX銘柄2020」も注目を集めました。

経営者への認知はいまひとつ

 いまや国が積極的な姿勢を見せるDXですが、一般の人々への認知度はどうでしょうか。Googleトレンドで「デジタルトランスフォーメーション」を調べてみると17年ごろから検索数が増えはじめ、2020年に入ってから急激に注目を集めていることが分かります。

Googleトレンドで過去5年間の「デジタルトランスフォーメーション」の推移を表示。ここ1年で注目度が高まっていることが分かる
Googleトレンドで過去5年間の「デジタルトランスフォーメーション」の推移を表示。ここ1年で注目度が高まっていることが分かる

 確かに認知度は上がっていますが、まだまだ正しい理解は進んでいないようです。筆者が運営するカーマンライン(東京・渋谷)が2020年6月に全国の経営者に対して行った調査では、なんと約8割が「デジタルトランスフォーメーション」について「知らない」という回答でした。

日本国内企業の経営者・役員に実施した調査結果(有効回答数は574件)。カーマンラインが運営する人材シェアサービス「シェアボス」調べ
日本国内企業の経営者・役員に実施した調査結果(有効回答数は574件)。カーマンラインが運営する人材シェアサービス「シェアボス」調べ

 さらに「知っている」と答えた経営者の中でも「関心がある」という人はわずか34.3%という結果でした。急速に認知度が上がっているものの、まだまだ正しい理解が進んでいるとは言い難いこのDXという言葉、一体何を示しているのでしょうか。国家を挙げてまで推進しなければならない背景や理由はどこにあるのでしょうか。

DXの現実は「千差万別」

 筆者自身もDXの経験者です。私はIDOM(旧ガリバーインターナショナル)という中古車流通の大手企業で、NOREL(ノレル)という自動車サブスクリプション事業を事業責任者として推進してきました。

 数千人の営業マン・店舗スタッフを抱えるリアルビジネスを主力とする企業が、クレジットカードさえあれば申し込めて3カ月ごとにクルマを乗り換えられるインターネット上のサブスクサービスを立ち上げるというのは、まさに組織変革や業態変革をともなうDXでした。

 また、その前後でもシステムエンジニアやコンサルタントとして様々な企業のデジタル変革を支援し、その成功や苦労を目の当たりにしてきました。プロジェクトの中に予算が数千万円規模の小規模なものから、30億円を超える巨大プロジェクトまでありました。

 そのように様々なデジタル変革を体験してきた中で感じるのは、企業のステージや業態、そして将来像として描くビジョンによって、DXという言葉が指す意味や実務は様々であるということ。また、DXという言葉が多様で捉えどころのない使われ方をしているがゆえに、推進の方法は企業によって千差万別であり、その本質を見失いやすく、社内でのコンセンサスを形成することすら難しいという実情でした。

 本連載では、そのような筆者の実体験、及び東西の文献や事例をひもときながら、DXの全体像を解き明かしていきたいと思います。

DXが持つ3つのコンテクスト

 先ほど「企業にとってのDXは多様であり千差万別」と書きました。

 DXには3つのコンテクスト(背景や文脈)が存在すると考えています。原典の定義と言われる「広義のDX」、国内ビジネス文脈で主に使われる「狭義のDX」、そして最も定義の範囲が狭く多様な「自社(各社)の取り組みとしてのDX」です。

DXは「広義のDX」「狭義のDX」「自社の取り組みとしてのDX」と3つに分類できる
DXは「広義のDX」「狭義のDX」「自社の取り組みとしてのDX」と3つに分類できる

 それぞれ順を追って説明していきましょう。

広義のDXは「社会全体を捉えた大きなうねり」

 DXについて海外のサイトを検索すると、原典としてスウェーデン、ウメオ大学エリック・ストルターマン教授の定義が出てきます。少し難しくなりますが、このDXの原典について紹介しておきましょう。05年より米インディアナ大学ブルーミントン校にて教べんを取るストルターマン教授が、04年に発表した 論文「Information Technology and the Good Life」がはじまりであると言われます。

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