視点を自由に選べる音楽ライブ、AIで自動作成する議事録、声でつながる新SNS…新技術と発想を駆使し、テレワークで大きく変わった仕事や生活をより良いものにするサービスが続々と生まれている。ブレイク間違いなしの10社を選出した。

※日経トレンディ2020年12月号の記事を再構成

新しいサービスを提供する、ブレイク間違いなしの10社を紹介しよう
新しいサービスを提供する、ブレイク間違いなしの10社を紹介しよう

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世界を変える日本のスタートアップ10社 自由視点ライブ配信「AMATELUS」(アマテラス)
好きな視点を選んで音楽ライブを鑑賞
誰かの視点を“ジャック”する新体験も

 スポーツ中継や音楽のライブ配信に革命を起こすと期待されているスタートアップがある。それが、AMATELUS(アマテラス)だ。

 同社が開発した「SwipeVideo」は、配信が難しかった「自由視点映像」を簡単にそして素早く提供できる画期的なサービス。従来の一般的な自由視点映像では、すべての視点の映像を一つにまとめてデータ化するため、映像処理や回線に大きな負荷がかかっていた。それに対し、SwipeVideoは複数の映像の中から、視聴者が選んだ視点の映像だけをクラウドから高速に送る“逆転の発想”で、配信を劇的に効率化した。この配信技術は国際特許を取得済みで、今後サービス拡大を加速させる。「従来の自由視点映像は、視聴者が任意に映像を切り替えられないのが基本だった。だが、見たいものは人それぞれ。自由に選べることが新たな体験になり、臨場感を生む」と、CEOの下城伸也氏は開発した思いを語る。

アマテラスCEOの下城伸也氏。SwipeVideoは既に複数の国際特許を取得。高速大容量の5Gを使ったサービス開発も進める
アマテラスCEOの下城伸也氏。SwipeVideoは既に複数の国際特許を取得。高速大容量の5Gを使ったサービス開発も進める

 4G環境下でも使えるうえ、高速大容量・低遅延という次世代通信の5Gの特徴を生かせると、通信キャリアも注目。2020年9月には、NTTドコモとNTTドコモ・ベンチャーズが開催した「docomo 5G DX AWARDS 2020」で最優秀賞を受賞。コロナ禍によって、オンライン配信の新技術に注目が集まる中、期待は高い。

 今後、同社が目指すのが、UGC(User Generated Contents)プラットフォームの開発だ。「ユーザー一人ひとりが“テレビ局”になり、誰もが送り手にも受け手にもなれる、自由なプラットフォームを構築したい。実現すれば、現状の“ブロードキャスト”が“ピープルキャスト”へと進化する」(下城氏)。イベント参加者がそれぞれスマホでライブを撮影して配信すれば、高額な配信機器を整備することなく、自由視点映像の配信が可能に。配信に関しては、権利関係を明確にする必要はあるものの、無数の視点を“ジャック”する体験は世の中を変える可能性を秘める。

「FNS歌謡祭」(フジテレビ系)では複数台のスマホで出演者を撮影して配信(右写真)。HTML5で動作するため、視聴時に専用アプリは不要で、ウェブブラウザー上で利用できる。ナオト・インティライミの全国ツアー(左写真)の映像配信にも採用されるなど、エンタメ分野での活用が進む
「FNS歌謡祭」(フジテレビ系)では複数台のスマホで出演者を撮影して配信(右写真)。HTML5で動作するため、視聴時に専用アプリは不要で、ウェブブラウザー上で利用できる。ナオト・インティライミの全国ツアー(左写真)の映像配信にも採用されるなど、エンタメ分野での活用が進む
世界を変える日本のスタートアップ10社 ソーシャルラジオ「stand.fm」(スタンドエフエム)
誰でもラジオDJに 「声」でゆるくつながる

 いつでも好きなときに、スマホからラジオDJのように音声を配信できるアプリが「stand.fm」だ。

 開発したstand.fmの共同代表を務める中川綾太郎氏は、「声を聴くことで相手との心の距離が縮まる。従来のSNSをはじめとしたインターネット上にはない、エモさを感じてつながれる場所をつくりたい」と、同サービスを生み出した。

「将来的にはYouTuberのような“声のスター”を輩出したい」と話すstand.fmの中川氏
「将来的にはYouTuberのような“声のスター”を輩出したい」と話すstand.fmの中川氏

 ユーザー同士のコミュニケーションを重視しており、収録配信の他、生でのライブができるのも特徴だ。ライブは、配信者がリスナーからのコメントに積極的に応える、ソーシャルな関係性が醍醐味。リスナーが「参加ボタン」を押して配信者に許可されれば、その番組に“声”で出演し、かけ合いを始められるのは新体験だ。その他、配信者が自分の友人を複数招いてゲスト出演してもらうといった使い方もできる。画作りが不要で気軽に始められるうえ、ほどよい距離感が受け、ファンと交流するために著名人やインフルエンサー、企業が使っている他、自分の好きなテーマで雑談をする“普通の人”も多い。

 リスナーが購入した課金アイテムを配信者に送る“投げ銭”機能やチャンネルを月額課金にできるなど、収益化の仕組みも充実。YouTubeの音声版として、大きく飛躍する可能性がある。

レター機能で事前にフォロワーから質問を集め、配信のネタにすることもできる。リスナーはキャンディ(120円)など、課金アイテムで応援することも可能
レター機能で事前にフォロワーから質問を集め、配信のネタにすることもできる。リスナーはキャンディ(120円)など、課金アイテムで応援することも可能

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