
日経トレンディと日経クロストレンドが選んだ「2021年ヒット予測ランキング」5位は「コオロギフード」。無印良品も参入するなど、注目の「サステナブル食」としてブレイクしそうなのがコオロギなのだ。
※日経トレンディ2020年12月号の記事を再構成
【5位】「コオロギフード」
あっと驚く次世代たんぱく質
環境に優しい新たな“食材”として、おいしい料理に早変わり
重さの6~7割がたんぱく質――。驚くほど高たんぱくな食品がコオロギだ。数年前からじわじわと注目されてきたが、昨今は「サステナブル」の観点から“ムシ”できない存在になっている。サステナブルとは環境に優しい社会を目指す考え方で、米国では環境負荷の低いたんぱく質として、植物肉や昆虫食が注目されている。日本でも、コスメやファッションなど、様々なジャンルで耳にするようになってきた言葉だが、食品について環境負荷を考えるという意識は浸透していなかった。だがついに、「サステナブル食」としてブレイクしそうなのがコオロギなのだ。
2020年には、昆虫食の概念が一変する出来事が日本で起きた。良品計画が5月に「コオロギせんべい」を発売したのだ。オンラインショップ限定だったにもかかわらず、何と発売初日に完売。同社は原材料であるコオロギの確保を急ぎ、6月に販売を再開した。
「無印良品からコオロギを使った商品が発売されたというのは業界的にもインパクトが大きく、追い風になった」と話すのは、Join Earth代表の篠原祐太氏だ。同社が6月にオープンしたレストラン「ANTCICADA」では、昆虫食のコース料理を提供。従来のマイナスイメージを覆すような、高級感あふれるメニューを提供し、連日ほぼ満席で予約が取れないこともあるという。
中でも昆虫食の間口を広げているのが初心者向けメニューの「コオロギラーメン」だ。日曜限定のメニューだが多い日は1日90~100杯の注文が入るほど大人気。「コオロギは癖のない味で初心者向き。ただ逆に言えば味に特徴がないので、昆虫食に慣れたらタガメなどにチャレンジするのもいい」(篠原氏)。21年は商材をスーパーなどへ出荷する計画もあるという。
“フレーバーコオロギ”の研究もスタート
通販を中心に昆虫食を扱うTAKEOも絶好調だ。14年の創業時と比べると、19年度の売れ行きは約15倍。9品目だった取扱商品数は約70品目にまで急拡大している。売れ筋商品は「国産こおろぎ 食べくらべ」。種類や育て方によって味が変わるというコオロギを3種類組み合わせ、それぞれの個性に合わせて調理。コオロギを食べ比べて、SNSなどでその体験を披露したいという人は今後増えるだろう。
そのTAKEOに、原材料のコオロギを供給しているのが太陽グリーンエナジーだ。様々な企業から問い合わせが相次いでいるといい、現在年間1トンの生産量を、将来的には月間1トンにまで増やす予定もある。出荷直前にイチゴやメロンを食べさせ、フルーツ味にするといった“フレーバーコオロギ”の研究も同社は進めている。
汎用性が高い食材として最も広まりそうなのが「コオロギパウダー」だ。パウダー状にすることで製粉、製麺、調味料など食品としての加工がしやすくなる。高崎経済大学発のベンチャー企業、FUTURENAUTではコオロギパウダーを商品として販売。大手食品メーカーとの取引も始まっているという。
大豆ミートなど、動物性の食品を植物由来に置き換える動きも加速。日本のサステナ食は、「それどんな味なの?」という興味から始まりそうだ。