日経トレンディと日経クロストレンドが発表した「2020年ヒット商品ベスト30」の1位に「鬼滅の刃」が選ばれた。アニメ化をきっかけに人気が拡大すると、単行本は史上最速で1億冊を突破。10月に公開された映画は、公開後わずか10日で興行収入が100億円を超えた。企業コラボも異例の広がりを見せるなど、まさに2020年を象徴するメガヒットとなった。

※日経トレンディ2020年12月号の記事を再構成

史上最速で累計発行部数(電子版含む)が1億部に到達した (C)吾峠呼世晴/集英社
史上最速で累計発行部数(電子版含む)が1億部に到達した (C)吾峠呼世晴/集英社

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1位「鬼滅の刃」

“異能”のヒット作が累計発行部数1億部突破
食品から衣服まで全部売れる前代未聞のブーム

 人気絶頂で潔く終幕し、希代のメガヒット作品となった『鬼滅の刃』。新刊発売時には書店に単行本が所狭しと並べられ、作品の世界観に似た「聖地」には人があふれる。美容院では、登場キャラクターと同じ“鬼滅カラー”に髪を染める若者が増加。まさに未曽有のヒット現象を巻き起こした。

 2020年5月の連載終了後もなお、漫画史にその名を刻む記録を更新している。10月2日に最新22巻が発売されると、累計発行部数(電子版含む)は1億部に到達し、史上最速で偉業を達成した。19巻から4作連続で週間100万部を超えており、22巻はシリーズ最高となる週間146万5000部を記録。10月9日発表のオリコン週間コミックランキングで1位となり、20年度のコミック週間売り上げの中でも最高の数字になった。7月13日付のオリコン調べでは、シリーズ総売り上げが7161万8000部に到達。コミックシリーズ別歴代2位に浮上している。

 人気が拡大する一つの契機となったのが、19年4月のアニメ化だった。放送前、累計350万部だった発行部数は、1年半で約29倍に。「空の境界」や「Fate」シリーズなどヒット作を手掛けてきた制作スタジオ・ufotableの映像美を強みに、異例のプロモーション戦略でヒットを後押しした。

 1~5話を一部映画館で先に上映して、アニメ放送前に期待感を高め、深夜アニメにもかかわらず、全20局で放送。放送終了後も20以上の映像配信サービスで公開し、とにかく認知度を高める施策を次々取ったのだ。深夜帯には見られなかった小中学生にまで幅広く知られるようになり、「全集中の呼吸」などキャッチーなワードも、彼らがこぞってまねする対象になった。

注)『鬼滅の刃』累計発行部数(電子版含む)のデータ
注)『鬼滅の刃』累計発行部数(電子版含む)のデータ
1話の舞台となる雪山のシーン。作画に一切手を抜かないという制作スタジオ・ufotableは、スタッフが実際に雪山のロケハンを敢行。体感したことで、寒々しさまでもが伝わる絵になった (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
1話の舞台となる雪山のシーン。作画に一切手を抜かないという制作スタジオ・ufotableは、スタッフが実際に雪山のロケハンを敢行。体感したことで、寒々しさまでもが伝わる絵になった (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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