
日経トレンディと日経クロストレンドが11月3日に発表した「2020年ヒット商品ベスト30」。コロナ禍でヒットした商品とは? ランキングの全貌とそれぞれの商品・サービスの「ヒットした理由」について紹介する。
※日経トレンディ2020年12月号の記事を再構成
2020年3月に東京五輪が延期になり、4月には緊急事態宣言が発令。ヒットが約束されていた商品やサービスが相次いで延期になった。一方、以前からあったマスクやビデオ会議システムが脚光を浴びると同時に、閉塞感を打ち破り、生活を豊かにする商品がいくつも登場した。
そんな異例尽くしの1年にヒットした30商品を、日経トレンディと日経クロストレンドが独自に評価しランキングした。本記事ではランキングの全貌を紹介する。
ヒット商品ランキング特集は、11月4日発売の日経トレンディ12月号に掲載。クロストレンドでも今後、1位から30位までの解説や地方発ヒット/業界別ヒットを順次掲載していく。
評価項目
【売れ行き】:売上やシェアをどれだけ拡大したか。どれだけ人を集めたか。売れ行きはどれくらい継続する余地があるか。
【新規性】:これまでにない画期的な技術、着眼点、売り方の工夫があったか。
【影響力】:他社の追随を呼んだか、あるいは従来にない市場を形成したか。生活スタイルや社会の常識を変えて、世の中に影響を与えたか。
1位は「鬼滅」、檸檬堂は5位に入る
ランキングの1位~10位は以下の通り。
1位 鬼滅の刃(漫画)
2位 マスク消費(日用品)
3位 あつまれ どうぶつの森(ゲーム)
4位 Zoom(ビデオ会議システム)
5位 檸檬堂(レモンサワー)
6位 AirPods Pro(ワイヤレスイヤホン)
7位 モバイルオーダー(飲食店のスマホ注文)
8位 Shupatto(エコバッグ)
9位 今日から俺は!! 劇場版(映画)
10位 ゴキブリムエンダー(ゴキブリ駆除剤)
令和最初の正月を迎えた時は、3カ月後にこれほど自由が制約された生活を余儀なくされるとは、夢にも思わなかったはずだ。それが、東京五輪のある2020年に向けて準備されてきた新施設や新商品の多くが先送りされ、消費は大きく転換。外出自粛によって、外食や旅行、スポーツ観戦などの「コト消費」を奪われた人々が向かったのは、自宅で少しでも充実した生活を送るための消費だった。
その結果、これまでになかったトレンドが家から生まれた。総じて好調だったゲーム市場の中でも突出して売れた「あつまれ どうぶつの森」(3位)は、同じ「村」に複数のプレーヤーが住めるという珍しい設定で、自粛生活で欠乏していた、他者とのコミュニケーションを補った。またトレーニングジムの代わりに「リングフィット アドベンチャー」(13位、後述)、映画館ではなく「popIn Aladdin 2」(15位、後述)...... と売れていき、かつてないほど「おうち時間」は充実するようになった。
2020年11月時点で、新型コロナは欧米では猛威を振るっており、日本も予断を許さない状況だ。そんな中、ニューノーマル時代の「新標準」と言えそうな商品が続々とヒットした。その筆頭はもちろんマスク消費(2位)だ。人混みや店舗内に行くときには装着するのがすっかり「マナー化」。様々なメーカーがマスク本体や関連商品に参入する一大市場になっている。
ニューノーマルへの対応という点では、「Zoom」(4位)などのビデオ会議システムも不可欠なものになった。様々な会社がテレワークをできたのも、自宅のパソコンなどでコミュニケーションがある程度取れたからだ。仕事だけでなく、英会話やヨガのレッスン、各種のセミナー、果ては飲み会などに使う人も続出。これらの一部は、コロナが収束した後にも残りそうだ。
マスクとは別の意味で、持ち運ぶのが当たり前になったのが「Shupatto」(8位)などのエコバッグ。また夏場には、携帯型扇風機に代わって、冷える半導体で首を冷やす「ペルチェ素子クーラー」(22位、後述)を装着する人も増えた。
2019年秋以降にデビューし、最も大型ブランドに育ったのが、日本コカ・コーラ初の酒類「檸檬堂」(5位)だ。既に強いプレーヤーが熾烈な戦いを繰り広げているレモンサワーという成長市場で、見事に垂直立ち上げを果たし、トップの座を射止めた。味を追求した「ちょっと高いレモンサワーRTD」の分野には、その後も様々な企業が新商品を投入しており、一層市場が盛り上がるきっかけにもなった。 「市場創出」を成功させた新商品には、他にゴキブリムエンダー(大日本除虫菊・10位)、22位のペルチェ素子クーラー分野を盛り上げた「レオンポケット」(ソニー)などがある。
一方で人々を勇気づけたのが、「努力する」ことの大切さを体現したヒーローだった。アイドル候補者101人が、 デビューを勝ち取るために奮闘するオーディション番組が人気を博し、その「JO1」(20位)のデビューCDは初週で32万枚以上売れた。漫画も映画も空前の数字をたたき出している『鬼滅の刃』(1位)も、 妹を救うために努力を続ける主人公に多くの人が感情移入できたからこそのヒットだといえる。この努力を応援する感情が、「アフターコロナ」への活力となることを期待したい。
次ページでは、1位~30位のランキングと各商品の概要を紹介する。
全30商品のランキング発表
【1位】鬼滅の刃
“異能”のヒット作が累計発行部数1億部突破。食品から衣服まで全部売れる前代未聞ブーム。
【2位】マスク消費
国民総マスクで5000億円市場に急成長。異業種が続々参入し、関連商品もヒット。
【3位】あつまれ どうぶつの森
約3カ月で500万本を売り上げた異例のヒット。無限に成長し続ける“あつもり経済圏”を確立。
【4位】Zoom
テレワークの象徴が売り上げ100億円へ。会議用ツールが習い事や飲み会に波及。
【5位】檸檬堂
レサワ界に現れた「超新星」が突然トップの座に。“ちょい高”でも売れる新市場を作り上げた。
【6位】AirPods Pro
密閉型に豹変し消音性能で他を圧倒。テレワークでも活躍し首位を堅持した。
【7位】モバイルオーダー
注文から決済まで非接触でスムーズ。新様式がコロナ禍の飲食店を救った。
【8位】Shupatto
シリーズ累計で700万個を突破。レジ袋有料化で畳めるバッグが躍進。
【9位】今日から俺は!! 劇場版
“3世代仕様”設定と総力宣伝で興収50億突破。ヤンキーが映画館ににぎわいを取り戻した。
【10位】ゴキブリムエンダー
くん煙剤に上積みしてシェア約3割に到達。ものぐさなゴキブリ嫌いの“救世主”に。
【11位】サントリー緑茶 伊右衛門
「緑の液色」映えの戦略が大当たり。年間5500万ケースのV字回復。
【12位】愛の不時着
Netflix有料会員500万人に貢献。第4次韓流ブーム呼んだ王道ドラマ。
【13位】リングフィット アドベンチャー
フィットネスとゲームの融合に成功。通年品薄で争奪戦も160万本突破。
【14位】食べチョク/ポケットマルシェ
厳選農家が売りの産直ECが躍進。リピーター続出で流通総額40倍も。
【15位】popIn Aladdin 2
天井からつる新発想で累計6万台超。より障害物に強い2代目が絶好調。
【16位】スマホ証券
初心者・若年層の投資意欲を増進。ネット大手に劣らぬ年30万口座ペース。
【17位】ファブリーズ W消臭 トイレ用消臭剤+抗菌
においの悩みを「抗菌」追加で解決。時代のニーズに合致しシェア30%超。
【18位】note
利用者急増で6300万人突破。サロン化現象も生まれる新基盤。
【19位】オンライン診療
「初診解禁」で新規利用者が9倍増。コロナ下での通院自粛を解消した。
【20位】JO1
韓流オーディション番組発の新星。計6500万票を集め、社会現象に。
【21位】MIYASHITA PARK
「4階に屋上公園」という技あり開発。開放感求め渋谷-原宿に新たな人波。
【22位】ペルチェ素子クーラー
冷却デバイスで体を冷やす新習慣。外仕事の人に定着し20万台超え。
【23位】ライズ/ロッキー
コンパクトSUV人気を受け大躍進。高いコスパを武器に2社で計14万台。
【24位】無観客ライブ配信
有料でも見たい「画面越しの熱演」。20億円還元のプラットフォームも。
【25位】ポータブル電源
防災&キャンプ需要で大幅伸長。高額の大容量タイプもよく売れた。
【26位】ウーノ 男子コスメ
肌色補正用クリームが累計84万個。メンズ美容が40代以上にも広まった。
【27位】スフレ・プリン
「食感」「音」がSNSで話題に。ご褒美需要で売り上げ36億円。
【28位】ロキソニンS外用薬シリーズ
第2類への移行で一気に定番品に。「解禁」後は7.2億円と市場の1割強に。
【29位】プレミアムルームウエア
アパレル不調でも“家中服”は絶好調。5万円のパジャマが売り上げ4倍。
【30位】GoToトラベル
「上限2万円」で1689万人を動員。“東京解禁”発表で一気にブレイク。
