コロナ禍で人々の消費に変化が起きている。あたかも動物のナマケモノが無駄なく省エネで生きているように、消費スタイルも効率重視の「ナマケモノ化」が進行中。本連載では世代・トレンド評論家の牛窪恵氏に、「ナマケモノ消費」について取材を敢行。ファッション、ライフスタイル、飲食の3分野の動向についてQ&A形式でお届けする。第1回はファッション分野について。

コロナ禍によって我々人間の消費スタイルも「ナマケモノ化」が進んでいる ※画像はイメージ(画像提供:Inspired By Maps/Shutterstock.com)
コロナ禍によって我々人間の消費スタイルも「ナマケモノ化」が進んでいる ※画像はイメージ(画像提供:Inspired By Maps/Shutterstock.com)
コロナで加速する「ナマケモノ消費」
【第1回】 すっぴん力を磨く女性たち ヒット狙うなら「ナマケモノ」に学べ ←今回はココ
【第2回】 緩くつながり、楽しむおうち時間 外出自粛が促したナマケモノ化
【第3回】 ~Coming Soon~

必要なときに、必要な部分だけ化粧をする

新型コロナウイルスの影響で顕著になりつつある、化粧品の分野で起きている「ナマケモノ」な消費動向とはどのような現象でしょうか。

効率よく、必要なときに必要な部分だけ化粧をしている。

牛窪恵氏(以下、牛窪氏) テレワークや外出自粛の影響で、おしゃれをして外出する機会が減った。外出をしなければ、化粧の必要もないと考える人が増えるし、オンライン会議では自分の顔をデジタルで加工することもできる。結果的に、メイクの必然性を感じにくくなった。

 さらに外出時にはマスクを着けるから、顔の下半分は見えない。マスクに口紅が付いてしまうし、「目」以外の見えない部分は化粧する必要がないと考える人が増える。2020年8月に15~59歳の女性1655人を対象に行われた調査でも、メーキャップ化粧品の購入頻度が「減った」「とても減った」は5割を超えた(20年 アイスタイル調べ)。「ティントリップ」(韓国発の落ちにくい口紅)をはじめとして、各社落ちにくい口紅を販売してはいるものの、売り上げは順調とは言えない。

メイクアップ化粧品の購入頻度が「減った」「とても減った」の割合が半数以上に(画像提供/アイスタイル)
メイクアップ化粧品の購入頻度が「減った」「とても減った」の割合が半数以上に(画像提供/アイスタイル)

色物コスメは不調のようですね。基礎化粧品はどうでしょうか。

「すっぴん力」をつけようとしている人が増えている。

牛窪氏 スキンケア商品は伸びてきている。日本最大級の化粧品口コミサイト「@cosme(コスメ)」の20年上半期新作ベストコスメ(総合)を見ると、1~4位がスキンケア関連商品。また、先のアイスタイルが20年5月に行った調査でも、65%の女性が「スキンケアへの関心が増えた」と答えている。

アイスタイルが@cosmeユーザーを対象に20年5月に実施した「美容とライフスタイルに関するアンケート」では、65%の女性が「スキンケアへの関心が増えた」と回答(画像提供/アイスタイル)
アイスタイルが@cosmeユーザーを対象に20年5月に実施した「美容とライフスタイルに関するアンケート」では、65%の女性が「スキンケアへの関心が増えた」と回答(画像提供/アイスタイル)

 これも効率化した「ナマケモノ消費」の1つだろう。全てに時間とお金をかけるのではなく、本当に「自分のため」になることを選んでやっている。人に見せるための化粧より、自分のために必要なケアを行うなど、本質的な価値を重視し始めた。もちろん、化粧をしない時間が増えたことで、自分の素肌と向き合う時間が長くなり、気になるところをお手入れしたい気持ちもあるのだろう。他人の目は“盛る”ことで多少欺けるが、自分自身に対して、シワやシミはごまかせない。

画面に映るところだけおしゃれする

ファッション分野では、「ナマケモノ化」して効率的になっている面はありませんか。

テレワークが増え、上半身だけおしゃれする人が増えた。

牛窪氏 テレワークの影響で、オンライン会議が増えた。オンライン会議なら上半身しか画面に映らないので、効率よく上だけおしゃれをして、下はパジャマなどリラックスした服を着ている人が多い。

 それに伴い、各社がテレワーク向けの服装を提案している。例えばベイクルーズ(東京・渋谷)が運営するブランド「エディフィス」は2枚入りのパックシャツを5000円(税別)で販売し、テレワークに最適だと話題になった。青山商事は「おうちシゴト服」と題して、リラックス感がありながらオンライン会議でも「見栄え」がする服を提案。他にもオンワードが展開するブランド「ICB」が、テレワークのための着回し術を打ち出したり、オールユアーズ(東京・世田谷)が「リモートワーク応援プラン」として、ストレッチ性が高い仕事服をテレワークウエアとして提案しつつ、5000円オフのクーポン(期間限定)を発行したりした。

 ファッション誌も、光文社の「CLASSY.」はウェブサイトで「在宅勤務コーデ」として、華やかなトップスを着たり、スカーフを巻いたりと、上半身を華やかに見せる服や工夫を紹介している。

コロナ禍で倒産や廃業のニュースも多かったアパレル業界ですが、服は売れていないのでしょうか。

テレワークの影響で、売れていない。

牛窪氏 多くが売れていない。外出自粛の影響で店に行く機会が減ったし、おしゃれをして行く場所も少ない。プライベートだけでなく仕事でもそうで、やはりテレワークの影響が大きい。

 ただ、新型コロナウイルス感染症が流行する前から「衣服ロス」、すなわち「衣類の廃棄」を見直そうという動きが起きていた。例えば17年のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の調査によると、男性の3人に1人は「洋服を擦り切れるまで着る」「洋服代は1カ月で平均3000円未満」という結果が出ていたほどだ。つまり、ある程度はアパレル企業やブランドが淘汰される時期ではあった。それがコロナ禍で加速したという印象だ。アパレル業界にとっては厳しいが、衣服ロスを減らす動きが出てきたのは良い面でもあると思う。

テレワーク向けの施策を打っている企業は、売り上げは堅調なのでしょうか。

堅調とは言えず、今はほとんど「ユニクロ一強」の状態。

牛窪氏 これが効率よく買い物をする消費者の賢いところ。ブランド品を買わなくても、動きやすくて「きちんと感」が出せる服はユニクロで事足りるので、先述のようなテレワーク用に企画された商品を実際に買う人はまだ少ない。

 一方、ユニクロはベーシックで低価格、高品質な商品を、街中だけでなく住宅街の店舗でも提供しているので、テレワーク下でも強い。さらにサイズ展開が幅広く、自分にぴったり合うサイズの在庫をインターネットで確認できるのも魅力。そうなると、他社は同じ土俵で勝負をしたらまずユニクロに勝てない。長く着られる高価格帯のコートやダウンを扱う有名ブランドは売れ続けると思うが、普段使いのブランドはますます厳しい戦いを強いられるだろう。

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