
アフターコロナの消費者の変化を探る特集の4回目は、これまでの調査で明らかになったシニア女性や若者向けの市場を、企業がどのように掘り起こしているかを事例で見てみよう。雑誌「ハルメク」を発売するハルメク(東京・新宿)や、オーガニック化粧品などを扱うセレクトショップ「Cosme Kitchen(コスメキッチン)」を運営するマッシュビューティーラボ(東京・千代田)は、自社の事業をオンラインに切り替えることで売り上げや部数の増加につなげた。デジタルとリアルをうまく融合させ、人の気持ちを前向きにさせたことが成功のポイントだ。
新型コロナウイスル感染症の拡大に伴い、意欲が後ろ向きになりがちな60代のシニア女性の心をつかむにはどうすべきか。1つのヒントが、ハルメクにありそうだ。
通信販売で提供するハルメクは「50代からの女性誌」を掲げ、60代後半のシニア女性が主な読者。日本ABC協会が発表した2020年上半期(1~6月)の販売部数が月刊平均で32万760部。19年下期は同30万4604部で、19年上期は同24万8015部だったから、コロナ下でも大幅に部数を伸ばしている。
同誌の特徴は、雑誌と連動させながらシニア女性向けのイベントや講座を頻繁に開催している点。参加者が1000人に上る大規模なイベントも定期的に開催していた。読者とのコミュニケーションを強化することで誌面にも引きつけ、部数増につなげていた。
【第2回】 Z世代男性のリアル 「情報に踊らされるのは、もううんざり」
【第3回】 電子書籍へ向かうシニア女性 コロナ禍後に増えた消費は?
【第4回】 部数大幅増 雑誌「ハルメク」コロナ下でのデジタル戦略が奏功 ←今回はココ
【第5回】 コロナ禍で価値観が変わったZ世代 「量より質」への動き鮮明
だがコロナ下で、実際に会うことが難しくなった現在、リアルなイベントや講座はすべて中止や延期になった。それでも順調に部数を伸ばせた理由は、イベントや講座をオンラインに切り替えているからだ。よく見られている動画コンテンツは、自宅で過ごす時間が増えたため、部屋でできる体操など。雑誌の誌面でも自宅でできる体操の特集を組むなど、デジタルとリアルを連動させた。
従来も動画コンテンツを制作していたが、4月に緊急事態宣言が出されて自粛生活を余儀なくされた5月以降は、さらに増加。10月末には100本に達した。シニア女性に特化した動画コンテンツが、リアルなイベントや講座の代わりに読者との関係を深めて誌面への関心を高め、さらなる部数増につながるという好循環につながったようだ
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