
ブランドデータバンク約3万2000人の調査結果から、新型コロナウイルス感染症が引き起こした消費者の価値観の変化を探る特集。第3回は、女性60代に焦点を当てる。10代、20代のZ世代の次に大きな影響を受けたのが、この世代なのだ。
今回の調査対象(2020年6月)になった女性60代の平均的な姿は、以下の通りだ(図1)。平均年齢は63.7歳。平均世帯年収は500.8万円。平均個人年収は129.2万円で、月の平均小遣いは2万7219円だ。それぞれ、コロナ禍前の19年12月調査と大きな違いはない。
だが、消費者としての価値観や行動に関する質問への回答を細かく見ていくと、新型コロナに“萎縮”したかのように内向き志向を強めている女性60代の姿が浮かび上がってくる。コロナ禍前の前回調査(19年12月)とコロナ禍の中の今回調査(20年6月)で、女性60代の回答の差分を見ると、それが分かる。
「次から次へと欲しいものが出てきて困る」「ブランドものを持つのが好きだ」「メーカーやブランドが分からないものには手を出さない」「自らを磨くための投資は必要だと思う」など、さまざまな価値観78項目について「当てはまるかどうか」を聞いたところ、前回と今回の回答の差分がプラスマイナス3ポイント以上になった項目が女性60代は11項目もあった。これは女性10代(22項目)、男性10代(20項目)、女性20代(18項目)に次いで多い。それらをプラス、マイナスそれぞれ差分が大きかった順に5つずつ並べてみたのが図2だ。
【第2回】 Z世代男性のリアル 「情報に踊らされるのは、もううんざり」
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当てはまるという回答が最も増えたのは「あくせく働くよりも、のんびりと日常を過ごせることのほうが幸せだ」で、前回54.5%から今回は60.2%(5.7ポイント増)になった。以下、「人出の多いところはあまり好きではない」(5.5ポイント増)、「人に助言するのは得意なほうではないと思う」(4.3ポイント増)、「情報に踊らされるのは、もううんざりしている」(4.2ポイント増)と続く。
今回の調査を実施したのは、20年6月。新型コロナに対応して4月7日に緊急事態宣言が出され、5月25日にようやく全面解除された直後だ。解除されたとはいえ、「第2波」を警戒する声は国民の間でも強く、高齢者ほど重症化リスクが高いといった情報も広がっていたため、女性60代にとってはまだまだ不安が強かった時期だろう。
恐らく、当時の女性60代に共通した思いは、以下のようだったのではないか。
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