前回の記事で確認した「意味」を踏まえ、今回はどのように「マーケティングDX」を起こしていくかを具体的に紹介する。マーケターとしてどうDXのビジョンを描いていけばよいのか。多くの企業のDXを支援するLaboro.AIが、独自のコンセプトからその手順を説明する。
DX(デジタルトランスフォーメーション)と聞くと、漠然と新しいことをやらないといけない未体験ゾーンに突入するような気分になってしまう。確かに「デジタル」という手法自体には新しい技術の活用が期待されるものの、「トランスフォーメーション」そのものは、実は今の時代特有のものではない。
【第2回】 「AI導⼊の壁」を先駆者はどう超えた? 過去の慣習に縛られるな
【第3回】 DX導入の要 AIとマーケティング領域をつなぐフレームを獲得せよ
【第4回】 「DX=デジタルで変革する」ではない! マーケティングDXの誤解を解く
【第5回】 AIでマーケティングは劇的に変わる DX実現の⼿順「5つのC」とは?←今回はココ
以下は、AI開発を行う当社が、自動車関連の某メーカーと取り組んだ事例だ。目的地に行くための移動手段という、閉じられた見方をされてしまうクルマ。そこで、新たな価値をつくり出すため、「そもそもどこに行くべきか」という行き先そのものを提案するAIの開発に挑んだ。
ユーザーの潜在的な趣味嗜好を取得する仕組みを構築し、それを基にオススメの店舗や観光地をレコメンドするというものだ。レコメンドシステムそのものがDXなのではない。AIという技術をきっかけに、クルマの役割を変化させ、生活者の新たなライフスタイルの形を提案するという点で、DX実現を目指した事例ということだ。
歴史を振り返れば、石炭燃料による軽工業の機械化(第1次産業革命)、蒸気機関がもたらした交通の発展(第2次産業革命)、電気と石油が実現した重工業の進化(第3次産業革命)、ITが切り開いた情報化社会と、新しいテクノロジーが社会に影響を与え、生活者のスタイルをトランスフォームさせたケースは、これまでも多く見いだすことができる。いわゆるイノベーターたちは、なぜこのような発想を生み出すことができるのか。
非線形思考を生むための思考のクセ
それまでの常識や習慣にとらわれると、従来の延長線上でしかビジョンを描けなくなる。先の例で言えば、「クルマ=移動手段」という前提に縛られてしまう限り、「クルマ=目的地提案」という発想につながることは永遠にない。言い換えるなら、過去の直線上でしか進歩が考えられない「線形思考」に陥ってしまう。
一方、イノベーターには、直線上にはあり得ない突発的なアイデアを発想する考え方、「非線形思考」が特徴としてある。
ただ、非線形思考が特徴だと言っても、魔法のようなヒラメキとはまた違う。もう一段深く考えてみると、イノベーターは後述する「価値のメタ化」に優れているようだ。
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