とにかく「変わること」に価値が見いだされる時代になりつつある。DXがもてはやされる昨今、そもそも「トランスフォーメーション」とは何なのか。AI(人工知能)開発などを事業にし、多くの企業のDXを支援するLaboro.AIが解説する。まずは、いまさら聞きにくいこの“マーケティングDX”という言葉を分解し、改めてじっくりとかみ砕く。
マーケティングと、デジタルと、トランスフォーメーション。「マーケティングDX」というわずか9文字の単語の中には、実に3つの領域にまたがる概念が含まれている。マーケティング用語の中でもこれほど凝縮され、複雑な言葉はこれまで存在しなかったのではないか。一見シンプルなことから、まさに“DXカオス”と呼びたくなるほどにキーワード化してしまっているが、いざ実践を考えると、言葉の複雑さ以上に難しい印象を抱いてしまう。
【第2回】 「AI導入の壁」を先駆者はどう超えた? 過去の慣習に縛られるな
【第3回】 DX導入の要 AIとマーケティング領域をつなぐフレームを獲得せよ
【第4回】 「DX=デジタルで変革」ではない!マーケティングDXの誤解を解く ←今回はココ
マーケティングDXという言葉をあえて分解すれば、「マーケティング領域で、デジタルツールを活用し、トランスフォームする」ということだろう。マーケティング領域でのデジタル活用を思い返してみると、少し前であればEC(電子商取引)や電子決済、サプライチェーンマネジメントなどが思い付き、最近ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI-OCR(人工知能を取り入れた光学式文字認識)の導入がDXの好例として語られることもある。
しかし、こうした取り組みはシステムやツール導入に終始してしまう側面もあり、実は「マーケティングDX」に含まれる3つの領域のうち、マーケティングとデジタルしか満たせていない。また、先進事例としてもいわれるAIチャットボットは、もちろん技術的な先進性はありながらも、既存の接客業務を機械が代替しただけと考えると、本当に“トランスフォーム”といえるのか自信を持ちにくい。
正解がわからないまま、DXという言葉だけが先走っている。マーケティングDXとは一体何なのか?
意味不明な「トランスフォーメーション」を整理する
話をわかりやすくするために、いったんマーケティングとデジタルは置いておき、「トランスフォーメーション」という言葉に集中しよう。革新、変革、改革などの言葉に置き換えると、なんとなくのイメージはつかめるものの、ついこの間まで私たちが躍起になっていた「イノベーション」とも似たような印象がある。
学術な定義が明確になされているわけではないが、これらには明確な違いがある。まず「イノベーション(innovation)」の意味は、「新しいアイデアや手法を用いること(the use of a new idea or method)」とされる。リニューアルするという意味のラテン語「innovare」が語源で、ここから派生して革新的、創造的などの意味で用いられるが、あくまで新しい知識や技術・手法を用いることに軸がある。
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