資生堂が本気のDX宣言

 20年8月6日、資生堂は20年12月期の第2四半期売上高が前年同期比34.4%減と大幅に落ち込み、99億円の営業赤字になったこと、そして連結最終損益が220億円の赤字になる見通しを発表しました(前年は735億円の黒字)。コロナの影響で外出自粛が世界的に広がったことが響きました。

 この業績発表を受けて、オンライン説明会で同社の魚谷雅彦社長から以下の発言がありました。

資生堂・魚谷雅彦社長、20年12月期中間決算発言要旨
・デジタルとEC(電子商取引)をもっと加速させる
・全世界での媒体費のデジタル化率は現在約50%。
 2023年にはこれを90%以上、限りなく100%に転換する
・ターゲット効率を高め、ROI(投資利益率)を高める
・EC比率は現在全社で13%。2023年に25%に倍増させる。
 中国では2023年に50%にしていく
・東京本社にデジタルの世界戦略に携わるチームを設置
・日本事業でCDO(チーフデジタルオフィサー)を登用済み
・デジタルマーケティング専門人材の採用を強化する

 「資生堂ショック」、あるいは「資生堂が本気のDX宣言」とも捉えることができる内容です。

 百貨店やドラッグストアへの客足が落ち、インバウンドも壊滅的な中、EC事業は2割増とコロナ禍の厳しい状況を下支えしました。そのECをさらに伸ばそうと、23年までに媒体費のほとんどをデジタルに切り替えるという大胆なシフトを打ち出しました。ちなみに資生堂の媒体費は年間800億円に上ります(19年12月期)。

 資生堂は、決してコロナ禍で慌ててDXに飛びついたのではなく、以前からデジタル活用やイノベーティブな取り組みに積極的でした。例えば「Optune(オプチューン)」(20年6月に終了)は、利用客の今日の肌質と当日の天候情報を基に、最適な美容液と乳液を専用マシンで提供する、画期的なサブスクリプション型スキンケアシステムでした(月額1万円・税別)。

 また、19年7月にはオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」を開始し、「ビューティー(美容)」「ウェルネス(健康)」分野に貢献できるアイデアを持つスタートアップ企業を募集。50社の応募企業の中から採択した企業と協業を進めています。専門人材、組織を発足させて取り組む資生堂の「本気のDX」がどんな成果を上げるか、注目したいところです。

Q.なぜDigital Transformationなのに
「DT」ではなく「DX」?
 「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)なら略語は『DT』では?」─。ごもっともな疑問です。XはCX(顧客体験、Customer Experience)やUX(ユーザーエクスペリエンス、User Experience)のように体験の意味で用いられることが多い文字です。デジタル体験(Digital Experience)という言葉も存在し、DXと略す場合もあるにはあるのですが、デジタルトランスフォーメーションの普及の勢いに押しやられてしまった感があります。「trans-」は「cross-」と同義でcrossを「x」と略すケースが多いことから、DTではなくDXになった、という説が有力です。