アパレル工場直結ブランド「ファクトリエ」が食事業をスタートしたきっかけは、食の支援プロジェクトで商品があっという間に完売したことだという。「自分たちで勝手に服屋だと決めつけているだけで、買う側は服や食といった線引きはないのかもしれないと気付いた」と山田敏夫代表は言う。
日本各地のアパレル工場とものづくりに取り組んできた工場直結ブランド「ファクトリエ」を運営するライフスタイルアクセント(熊本市)は2020年12月、食事業「ファクトリエ フード」の展開をスタート。(詳しくは記事「アパレルブランド『ファクトリエ』が食へ 地産品仕掛け人鎌田氏と」)。その責任者となったのは、本連載を執筆しているONE・GLOCAL代表の鎌田由美子氏だ。なぜ2人はタッグを組み、何を目指すのか。その狙いを聞いた。
鎌田由美子氏(以下、鎌田) 私はスタート当初から、一顧客としてファクトリエの商品に興味を持ち、愛用していました。というのも、JR東日本から百貨店に出向していたときに、アパレルの売り場で「縫製工場は技術があっても下請けに徹している」「経営的に厳しいところも多い」ということをよく聞いていたからです。ですので、工場の名前がきちんと出るような形で、こなれた価格で、商品を直接お客様に提供するファクトリエが出てきたときに大変驚いたんです。山田さんとは数年前にお会いしたときから考え方に共通するものを感じ、「私は食でこういうことをしたい」とずっとお話ししていました。その後、サラリーマンを卒業してロンドンに留学し、戻ってきたタイミングで「食ビジネスを立ち上げたい」とお話をいただきました。
山田敏夫氏(以下、山田) ファクトリエでは熊本の店で19年から、地元で自然栽培や有機栽培を行っている方々にご協力いただき、食のイベントを開催していました。その方たちがコロナ禍の影響を受けて大変苦しい思いをされていると聞いたので、食べて支援する「ファクトリエ マルシェ」を20年3月20日に始めたんです。期間限定でしたが、驚いたのが販売した商品があっという間に完売したこと。コロナ禍で苦しむ農家を応援したいというお客様の思いが強かったのだと思いますが、自分たちで勝手に服屋だと決めつけているだけで、買う側は服や食といった線引きはないのかもしれないと。「良い作り手をお客さんに紹介し、適正な価値と価格でつなぐ」という提供価値は服も食も同じじゃないかと気がついたんです。その手応えがあったので、同年7月に鎌田さんが留学から戻られたときに「食で何かしたい」と相談しました。
ライフスタイルアクセント代表
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