マーケットニーズを捉えれば、地産品の収益はもっと上がる。マネジメントやマーケティングに長けたビジネスパーソンが参画することも、これから農業が活性化するための有効な手段ではないでしょうか。

(写真/Shutterstock)
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 これまで、都市生活者が第1次産業にかかわることで生まれる新たな可能性について述べてきました。しかし、現段階で農業は生産性向上が必要な分野の1つであることは間違いない上、各種の制度や制約、よそ者の新規参入の難しさなど、課題を多く抱えています。さらには高齢化や後継者難、耕作放棄地問題などネガティブな現状も多く耳にします。

 生産性を上げるには、秋田の大潟村のような大規模農業や、北海道のような全国の4分の1を占める耕地面積を生かして機械化された農業にスマート農法を組み合わせるのも一つの手段です。国は大規模農業を推奨しており、補助金などの支援も含め、今後さらにやりやすい環境になるのではないかと思われます。

 しかし、これが日本の農業にとって最良の解なのでしょうか。世界に目を向ければ、米国などの大規模農業の規模や効率は日本とは桁違い。さらに日本の地形は山あり谷ありで、中山間地での機械化は難しく、小さな面積では機械設備への投資は借金にもつながります。私は大規模農業の対極にある「小さくて個性的な農業や加工業」が元気になることで、高収益化の選択肢が増えると考えています。さらに、このスタイルの農業はこれからの地域の起爆剤になるのではないかと感じています。

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この連載が本になりました!
『「よそもの」が日本を変える』
(鎌田由美子著、日経BP刊)

 ニューノーマルは見たことのない世界ではなく、「デジタル化」「多様性」「環境意識」といった後回しにしてきた問題が目の前に突き付けられただけ――。JR東日本でエキナカや地域活性化を成功させてきた著者が、「『What if』?という自問自答が必要」「仕事と生き方は融合」「サステナブルが日常に」など、個人や企業の「これからの生き方」を提示する。

 アフターコロナの世界では古くからあるものづくりや文化に恵まれた「地域」に大きな可能性があり、そのカギとなるのが「よそもの」だという。テレワークの普及や副業解禁で都心のビジネスパーソンが「よそもの」として地域のものづくりやビジネスに参画し、マーケティングやマネジメントの知見を持ち込むことでシン・チホウ(新・地方)が生まれるというのだ。本書では著者が地域の1次産業の可能性に目覚めたきっかけとなった青森のシードル工房「A-FACTORY」をはじめ、鹿児島の超高級リゾート「天空の森」、「小さくて強い農業」を提唱する茨城の「久松農園」、英国南西部ウエールズにある古書を観光資源にした町「ヘイ・オン・ワイ」などの事例を紹介している。

 「私自身も『よそもの』として生きてきた」という著者の体験談も読み応え十分。民営化直後の文系女性1期生としてJR東日本に入社し、鉄道事業を経験せずにエキナカや地域活性化プロジェクトを立ち上げるなど、新規事業のオンパレード。49歳で上級執行役員としてカルビーにヘッドハンティングされるも、「好き」という気持ちが先に立って失敗した経験も。極めつけは50代半ばでの起業と、英国美術系大学院への留学。デジタルネイティブ世代に交じり、あらゆることがオンライン化された手続きや「生き物の動きをロボットで表現する」授業などに四苦八苦した。これらの経験を通じ、現代は二者択一の「ONLY、OR」ではなく、やりたいことをいくつも選べる「AND、WITH」の時代だから、勇気を持って一歩踏み出すことを提案する。
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