都市部のビジネスパーソンが地域の第1次産業に関わるチャンスが増え、コロナ以後の世界で新たな魅力を備えた “シン・チホウ(新・地方)”が生まれようとしています。「自分が住む地域にはこれといった魅力はない」と考えている人も多いかもしれませんが、地元の人には見えない “宝”が埋もれていることが多いのです。

その価値に気がつかない生産者は多い

 地元には見えていない、隠された魅力の一例を挙げたいと思います。

 2カ月前、鹿児島の「雅叙苑観光」の社長を務める田島健夫さんと久しぶりにお会いしました。同社が運営する宿泊施設の1つが超高級リゾート「天空の森」。東京ドーム13個分という広大な山にある5棟のヴィラからの景色は民家も人の姿も全く見えない大自然。そしてそのスケール感とともに感動したのが、ほぼすべてが地元素材と施設での自家製という食事です。

 例えば、朝食に出てくるフレッシュバターは近くの山の頂で完全放牧飼育をしている牧場の牛から搾った新鮮な牛乳をスタッフが容器を持って買いに行き、手作りしたもの。バター作りは難しくはありませんが、ノンホモジナイズド(生乳に含まれている脂肪球が均質化されていない)牛乳が手に入らないと作ることができません。出来たてのバターはさらっとした舌触りと口にふわっと広がるミルクの香りがあり、フレッシュならではの軽さとコク。有名ブランドの高級バターの何倍もおいしいと感じます。

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この連載が本になりました!
『「よそもの」が日本を変える』
(鎌田由美子著、日経BP刊)

 ニューノーマルは見たことのない世界ではなく、「デジタル化」「多様性」「環境意識」といった後回しにしてきた問題が目の前に突き付けられただけ――。JR東日本でエキナカや地域活性化を成功させてきた著者が、「『What if』?という自問自答が必要」「仕事と生き方は融合」「サステナブルが日常に」など、個人や企業の「これからの生き方」を提示する。

 アフターコロナの世界では古くからあるものづくりや文化に恵まれた「地域」に大きな可能性があり、そのカギとなるのが「よそもの」だという。テレワークの普及や副業解禁で都心のビジネスパーソンが「よそもの」として地域のものづくりやビジネスに参画し、マーケティングやマネジメントの知見を持ち込むことでシン・チホウ(新・地方)が生まれるというのだ。本書では著者が地域の1次産業の可能性に目覚めたきっかけとなった青森のシードル工房「A-FACTORY」をはじめ、鹿児島の超高級リゾート「天空の森」、「小さくて強い農業」を提唱する茨城の「久松農園」、英国南西部ウエールズにある古書を観光資源にした町「ヘイ・オン・ワイ」などの事例を紹介している。

 「私自身も『よそもの』として生きてきた」という著者の体験談も読み応え十分。民営化直後の文系女性1期生としてJR東日本に入社し、鉄道事業を経験せずにエキナカや地域活性化プロジェクトを立ち上げるなど、新規事業のオンパレード。49歳で上級執行役員としてカルビーにヘッドハンティングされるも、「好き」という気持ちが先に立って失敗した経験も。極めつけは50代半ばでの起業と、英国美術系大学院への留学。デジタルネイティブ世代に交じり、あらゆることがオンライン化された手続きや「生き物の動きをロボットで表現する」授業などに四苦八苦した。これらの経験を通じ、現代は二者択一の「ONLY、OR」ではなく、やりたいことをいくつも選べる「AND、WITH」の時代だから、勇気を持って一歩踏み出すことを提案する。
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