都市部のビジネスパーソンが地域の第1次産業に関わるチャンスが増え、コロナ以後の世界で新たな魅力を備えた “シン・チホウ(新・地方)”が生まれようとしています。「自分が住む地域にはこれといった魅力はない」と考えている人も多いかもしれませんが、地元の人には見えない “宝”が埋もれていることが多いのです。

その価値に気がつかない生産者は多い

 地元には見えていない、隠された魅力の一例を挙げたいと思います。

 2カ月前、鹿児島の「雅叙苑観光」の社長を務める田島健夫さんと久しぶりにお会いしました。同社が運営する宿泊施設の1つが超高級リゾート「天空の森」。東京ドーム13個分という広大な山にある5棟のヴィラからの景色は民家も人の姿も全く見えない大自然。そしてそのスケール感とともに感動したのが、ほぼすべてが地元素材と施設での自家製という食事です。

 例えば、朝食に出てくるフレッシュバターは近くの山の頂で完全放牧飼育をしている牧場の牛から搾った新鮮な牛乳をスタッフが容器を持って買いに行き、手作りしたもの。バター作りは難しくはありませんが、ノンホモジナイズド(生乳に含まれている脂肪球が均質化されていない)牛乳が手に入らないと作ることができません。出来たてのバターはさらっとした舌触りと口にふわっと広がるミルクの香りがあり、フレッシュならではの軽さとコク。有名ブランドの高級バターの何倍もおいしいと感じます。

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