ファストフードの「コンタクトレス決済」も進化が続く。日本マクドナルドは、駐車場に車を停めて車内でモバイルオーダーをすると、駐車場まで商品を届けてくれる。ケンタッキー・フライド・チキンは、ETCを使った新しいドライブスルーの形に挑戦。驚くほどストレスのない、2社の新決済を実際に体験してみた。
※日経トレンディ2020年10月号の記事を再構成
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、クルマに乗ったまま商品を受け取れる「ドライブスルー」を好む消費者が増えている。需要を受けて、郊外のファストフード店ではドライブスルーの利点を引き出して接触を減らすキャッシュレス環境づくりに挑んでいる。
「ずっと準備を進めていたが、(コロナ禍を受けて)顧客ニーズが高まった今のタイミングで満を持して開始することにした」(日本マクドナルド 未来型店舗体験導入チームリーダーの兼田規司氏)。同社は2020年5月、来店前に公式スマホアプリで商品の注文を済ませられる「モバイルオーダー」の機能を強化し、駐車場に止めたクルマの場所までクルーが出来たての商品を持って来てくれる新サービス「パーク&ゴー」を全国約250店で開始した。
従来のドライブスルーやテークアウトとの違いは、専用レーンに並んだりクルマから降りてカウンターに受け取りに行ったりする必要がない点にある。モバイルオーダーの画面でパーク&ゴー対応店舗を指定すると、「テイクアウト」「テーブルにスタッフがお届け」「店内でお食事(カウンター受け取り)」に加えて、「駐車場で受け取る(パーク&ゴー)」という選択肢が表れる。クルマを止めた駐車場の場所を番号で入力し、後は車内で待てばよい。クレジットカードまたはLINE Payを使って、事前に決済処理も済ませておける。つまり店員との“接触”が生じるのは、ウインドー越しに商品を手渡してもらう最後の一瞬だけだ。
パーク&ゴーは、小さな子供を連れた家族に人気だという。安全な車内にいたままじっくりと商品を選べるし、商品が出来上がるまでの時間はゲームに興じるなり自由にくつろげるからだ。
同社は「未来型店舗体験」を推進しており、モバイルオーダーの展開はそのための取り組みの一つだ。19年1月にまず沖縄県内の約30店で開始し、1年強で約2770店までエリアを広げた。パーク&ゴーは、クルマで訪れた“三密”を極力回避したい客に対する、マクドナルド流の新しいおもてなしだ。
他にも、客席やカウンター周りの接客に特化したスタッフ「おもてなしリーダー」(約1470店)の配置や、注文した商品を座席まで運ぶ「テーブルデリバリー」(約1900店)の提供など、便利で心に残る店舗への改革を進めている。キャッシュレスは新しい体験づくりの強力な武器となる。
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