スーパー大手では、従来のキャッシュレスにとどまらない「コンタクトレス」な買い物スタイルの構築が始まっている。イオングループの一部店舗で始まったのは、レンタルスマホを使って、商品をかごに入れる際に読み取って登録するという驚きの決済方式だ。
※日経トレンディ2020年10月号の記事を再構成
コンタクトレス(接触減)なキャッシュレス環境づくりに熱心に取り組む業種の一つが、スーパーマーケットだ。緊急事態宣言の発令直後、食料品や日用品を買い求める客が店頭に押し寄せ、店舗側は“三密”を回避する対策に追われた。その経験から店舗改革に乗り出し、コンタクトレスな買い物スタイルを提案する大手スーパーも現れている。
「ねぇママ。あたし、このバナナ、“ピッ”としてもいいかな」──。2020年5月に東京・有明地区にオープンしたばかりの「イオンスタイル有明ガーデン」。この店では、都内の別のイオンでは見られない独特の買い物スタイルを目にすることできる。白いカバーが付いたスマホを手にした客が、かごに入れるたびにカメラで商品を自分で読み取っているのだ。
実はこの店舗は、「レジゴー」という新しい決済の仕組みを導入している。「レジ前の行列に並ぶ必要をなくし、店員との接触時間も減らす。買い物体験を楽しいものにアップグレードする」。イオンリテール システム企画本部長の山本実氏はこう話す。
レジゴー導入店では、入り口付近のコーナーにずらりとスマホが並んでいて、無料で借りることができる。使えるのは専用アプリだけで、商品に張られているバーコード(一部生鮮食品などは値札)をカメラで読むと商品の一覧リストが逐次更新されていく。何が何個かごに入っているか、現在の合計金額もすぐ分かる。
要はレジゴーではスマホがレジの役割を果たし、店員の仕事の一部を客自身が代替する。似た仕組みとして、九州地盤でディスカウントストア運営のトライアルホールディングスが18年から導入しているタブレットを活用した「スマートレジカート」がある。レジゴーはスマートレジカートの機能の一部をスマホに凝縮したイメージだ。
バーコードを自分で読む行為は目新しいようで、イオンスタイル有明ガーデンでは子供に専用スマホを持たせて買い物を手伝わせている親子連れが少なくない。画面を見ながらあれこれ思案をしている主婦も多い。
では会計はどうするのか。専用レーンが用意されていて、精算機で決済を行う。精算機に貼られているQRコードを読み取るとスマホ内の情報が精算機へ転送されるので、後は現金かクレジットカード、電子マネー「WAON」などで支払えばよい。ここから先は通常のレジやセルフレジを使う他の客と同じで、商品を袋詰めする。
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