新型コロナウイルスの感染拡大により、「そうはいっても難しい」と言っていたような業態でもキャッシュレス化が加速している。その象徴は、郵便局だ。松屋では券売機のタッチすら必要がないように、モバイルオーダーを開始している。

※日経トレンディ2020年10月号の記事を再構成

 「ウィズコロナ」を前提とした新しい生活様式が世間に浸透するに従って、日本社会の「脱現金化」が幸か不幸か着実に進展している。2020年6月にキャッシュレス還元事業が終了すると、“お得”目当の人々が現金派に戻ると見る向きがあった。ただ実際には、現金を手渡すシーンを極力減らしたいと店舗側も消費者側も望むようになり、キャッシュレス化の流れは加速している。

 こうした社会の変化を受けて強まっているのが、「コンタクトレス(接触減)」に対する需要だ。せっかくキャッシュレスにしても、物理的なカードを店員に渡すのであれば、人との接触が生じてしまう。決済にまつわる行動で、接触時間をどう激減させるか、そもそも接触はなくせないのか。工夫が今、求められている。

2020年4〜5月にキャッシュレス比率急伸。日本郵便「大手町郵便局」では窓口にビニールシールドを張り安全性を高めている。使えるキャッシュレス決済は、クレジットカード(IC、コンタクトレス)、交通系ICカード、iD、QUICPay、WAON、au PAY、d払い、LINE Pay、メルペイ、PayPay、楽天ペイなど
2020年4〜5月にキャッシュレス比率急伸。日本郵便「大手町郵便局」では窓口にビニールシールドを張り安全性を高めている。使えるキャッシュレス決済は、クレジットカード(IC、コンタクトレス)、交通系ICカード、iD、QUICPay、WAON、au PAY、d払い、LINE Pay、メルペイ、PayPay、楽天ペイなど

 クレジットカード国際ブランドのジェーシービー(JCB)が20年7月末に実施した「キャッシュレス決済に関する調査」によると、コンビニや居酒屋勤務者、タクシードライバー300人のうち、実に約6割が現金の受け渡しに不安を感じていると答えた。またキャッシュレス決済を利用している一般消費者1000人の約65%が、新型コロナウイルス感染症対策としてこれまで現金を使っていた店舗での支払いをキャッシュレスに切り替えていると答えた。

※ジェーシービー(JCB)「キャッシュレス決済に関する調査」から
※ジェーシービー(JCB)「キャッシュレス決済に関する調査」から

日本郵便 全国8500局の郵便局でも

 「はがきを10枚、d払いでお願いします」。コロナ禍の20年7月から8月にかけて、日本郵便は全国約2万4000局のうち8500局でキャッシュレス対応を一気に進めた。都市部の大型局から地方の小さな局まで、窓口の光景は以前の現金しか使えなかった時とは激変している。

日本郵便は全国8500局でのキャッシュレス対応を一気に進めた
日本郵便は全国8500局でのキャッシュレス対応を一気に進めた

 ポイントは、持ち運び可能な小型決済端末を窓口ごとに配備することで、キャッシュレス利用時の客が局員と接触する時間が極力少なくなるようこだわった点にある。郵便料金、ゆうパックの運賃、切手やはがきなどの代金を支払う際、都内の大手町郵便局では局員は透明なビニールシールドの下からさっと決済端末を出す。客は電子マネーや交通系ICカードならタッチし、QRコード決済ならスマホ画面を表示して読み取ってもらえばOKだ。

小型決済端末を窓口ごとに配備。キャッシュレス決済するケースでは、ビニールシールドの下から決済端末を差し出してくれるでの局員との接触はほとんど生じない
小型決済端末を窓口ごとに配備。キャッシュレス決済するケースでは、ビニールシールドの下から決済端末を差し出してくれるでの局員との接触はほとんど生じない

 小型決済端末は、国内で使われている主な決済手段のほぼ全てに対応するいわゆる“全部入り”。日常的に使う郵便局だからこそ、自分がメインで使っているどの決済サービスでも使えるのはありがたい。実際に使ってみると全部入りだからこそ、現金を使わなければならなくなるシーンを減らせるのはとても安心だ。

 実は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、5月に予定していた全国展開を一旦延期した同社。局員に対する導入研修も一時ままらならなかった。ただ「キャッシュレス対応を予定通り進めてほしいといった声が寄せられた。ニーズを実感し、2カ月遅れでも一気に展開することを決めた」(デジタルビジネス戦略部長の橘佳紀氏)。先行して2月から導入していた65局では、4〜5月にキャッシュレス比率が高まったことも決断の背中を押した。

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