日本版「アフターデジタル」の夜明け

医療の分野でもアフターデジタルの世界は広がっている。設立6年の医療スタートアップが開発したニコチン依存症の治療用アプリが薬事承認された。スマホと連携する呼気チェッカー付きアプリで一酸化炭素濃度を毎日測定。データに基づいた「オフラインのない」禁煙指南で禁煙成功率を高めている。

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 「食べた直後は吸いたい気持ちが出てくるので、ランチを食べたらすぐに席を立ちましょう!」−−。禁煙外来に通院している会社員のAさんが昼休みでランチを終えたころ、スマートフォンにこんなメッセージが届いた。別の日には、吸いたい気持ちが抑えられなくなり、アプリから「吸いたい」と送ると、「少し外を散歩してみてはどうですか」「吸いたくなったらガムをかんでみてください」といったアドバイスが届いた。Aさんは以前禁煙に挑戦して失敗してした際、ランチ後に店内喫煙スペースで「1本だけ」と吸ってしまっていた。ランチ後を危険時間帯と認識して、アプリが先回りしてメッセージをくれたようだ−−。

 こんな禁煙治療が間もなく始まろうとしている。上記のスマホメッセージは、医師が処方する「治療用アプリ」が発したものだ。ニコチン依存症の治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」を開発したのは、医療スタートアップのCureApp(キュア・アップ、東京・中央)。2020年8月21日付で厚生労働省から薬事承認(製造販売承認)を取得した。治療用アプリの薬事承認は、アジア初。目下、20年度中の保険適用と処方を目指して準備中だ。

CureAppが開発したニコチン依存症向け治療アプリ
CureAppが開発したニコチン依存症向け治療アプリ

 同社社長の佐竹晃太氏は、治療用アプリの位置付けについて次のように説明する。 「従来の治療は、医薬品を服用する薬物療法と、医療機器を使う外科療法の2種類。前者は薬理学的な観点からの治療で、後者は解剖学的な視野からの治療だった。そこへ新たな治療戦略として、治療用アプリというデジタル療法の確立を目指しているのが当社。前2者の方法で効果が出にくい領域に対して、行動変容のアプローチで治療を可能にする」。

 ニコチン依存症の治療用アプリは、「患者用アプリ」、「医師用アプリ」、呼気中の一酸化炭素(CO)の濃度を自宅で計測できる「ポータブルCOチェッカー」の3つで構成され、禁煙外来で治療を受ける患者の院外での禁煙をサポートする。禁煙治療薬の服用と併用する。

 患者は患者用アプリで毎日、喫煙の有無や体調、症状、気分などについて選択・回答し、そのデータは医療機関のサーバーに送信、蓄積される。COチェッカーは、スマホと連携させて息を吹き込むとCO濃度を判定し、同様に送信、蓄積される。

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