
名古屋の街を、1台の金色のタクシーが走っている。フジタクシーグループ(名古屋市)の「金のフジタクシー」だ。同社が所有する504台のうち1台だけの特別な塗装で、その希少度とおめでたい色から「見た人には幸運が訪れる」とも言われている。新型コロナウイルス感染症の拡大が続く世の中に、少しでも明るい話題を届けたいという願いも込められている。
トヨタ自動車のエスクァイアをベースにした現在の車両は3代目で、2020年7月31日に運行を開始した。初代と2代目はいずれもクラウンコンフォートがベースで、初代の運行開始は07年に遡る。この年は同社の創業50周年に当たる。それを記念して、自社の車を使った表現が何かできないだろうかと経営陣は考えた。その結果、「テーマとしたのが『究極のおもてなしを提供し続ける』であり、それを金色で表現した」と3代目の発表会で専務の青井一仁氏は語った。
名古屋といえば、名物に「金のしゃちほこ」がある。この金のタクシーもそれにあやかったと思われがちだが、実際には「最高」「最上級」を表すことが出発点だった。当初は50周年記念で1年限定で運行する予定だったが、ユーザーから「もっと続けてほしい」という要望が数多く寄せられたことから期間延長を重ね、さらに代替わりをしながら現在まで続いている。2代目までの総走行距離は104万4315キロメートル、乗車人数は15万9157人に達した。
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23回ものチャレンジで色を決定
塗装に使われている金色はオリジナルカラーだ。最初はミニカー、次にプラモデルにパール系ゴールド、メタリック系ゴールドなどさまざまな金色を塗ってみて、どんな金色が最もイメージに合うのかを検討した。その段階を経て、実車での検討に入っても、青井氏が数えているだけで23回、色を作ったという。
「最終的に色を決めたのは4月の晴天の日。1枚のドアを塗ってみて、もう少し深みが欲しいと緑色の塗料を追加して、最終的な金色が出来上がった」(青井氏)。この色が代々受け継がれ、現在の3代目も同じ金色が踏襲されている。
金色に塗ったのは外装だけではない。センターコンソールやハンドルの一部、ドアノブやエアコンの吹き出し口など、もともとシルバーだったパーツや取り外しやすいパーツも金色に塗装している。同社のタクシーの中でエスクァイアを採用しているのはこの1台のみ。同社によると、おそらく名古屋市内全体を見ても他に例はないだろうという。その点でも特別な存在だ。
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