ラジオ界の最重要人物といえば、長年、深夜ラジオのパーソナリティーとして数々の名物企画と伝説を生み出してきた伊集院光だ。30年以上ラジオパーソナリティーを務めるなかで、自身やラジオを取り巻く環境も劇的に変化している。巻頭特集で「ラジオ」を取り上げた日経トレンディ向けに話してくれた今のラジオに対する思いを、Webだけのエピソードも含めつつ再掲載する。

※日経トレンディ2020年11月号の記事を再構成

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――2016年からは、「伊集院光とらじおと」(TBSラジオ 月~木曜8時30分~11時)で、朝の「顔」としても活躍されています。20年6月には約14年間の番組に幕を下ろした久米宏から「TBSラジオをよろしくね」との言葉を受けたそうで。深夜ラジオとは違う、朝番組ならではの番組作りとは?

 まず、深夜の番組(「伊集院光深夜の馬鹿力」)については、リスナーがどう思うかってことはあまり考えないで作ってます。深夜ラジオを卒業してて当たり前の年齢になっているので、今は余命みたいなものですから(笑)。

 一方で、朝の番組(伊集院光とらじおと)は、日中、ラジオを聞ける30代ぐらいから、高齢者まで全員が楽しめるようにするにはどうしたらいいかをすごく意識してます。一つのキーとして、70歳代のリスナーが「若いときこうだったんだよ」ということに対して、「マジっすか(笑)」って30代が反応するような、世代差を互いに面白がれるものが、一つ一つのコーナーでできているといいなと思っています。

 例えば「十万歳のお言葉」は、高齢者にインタビューするコーナーなんですが、「今まで買った電化製品で一番感動したのは」という質問に、「電球。初めて電球がついたときに超ビビった」って言われて、もう感動と爆笑ですよ。想定していたのは、冷蔵庫とか洗濯機でしたから。

夜の顔から朝の顔へと
夜の顔から朝の顔へと
「大沢悠里のゆうゆうワイド」の後継番組として2016年4月にスタート。ニュースや投稿、ゲストとのトークなど、伊集院初の朝帯ラジオ

リスナーも楽しめて、広告効果も高い企画を作る

――伊集院光とらじおとでは、企業コラボの企画が増えています。ラジオの企画作りやビジネスモデルも変革の時を迎えていますか?

 冷静に考えると、今って史上空前にラジオの受信機を持っている人がいる時代です。スマホにradikoがありますから。かつてステレオやミニコンポからラジオの機能が無くなっていった時代の、あの大ピンチから比べると、とんでもないチャンスだと思っています。「今さらラジオ?」みたいな言い方をされがちですが、僕はそうじゃない気がしていて、広告費との費用対効果でいうと賢い企業はラジオを使っていると感じますね。ラジオは相変わらず聴取率1%なんですが、以前はテレビの視聴率30%に比べたら1%ってなんだよって感じだったけれど、確実に信頼を置いている人たちが1%聞いているすごさってラジオの特性です。

 昔みたいにTBSテレビとのお付き合いのついででTBSラジオもスポンサードします、みたいな雑なお金の出し方をしてくれることはなくなったので、フリースポンサーの数は減っています。でも、企画コーナーも含めたスポンサーだと、僕の番組に関して言えば、ちょっと枠が足りないくらいのところまで来ています。

 このご時世、スポンサーサイドのご要望が強くなる傾向にありますが、僕はそれを後ろ向きに考えるんじゃなくて「ご要望を伝えてくだされば、ラジオのプロとしてリスナーも楽しめて、広告効果も高い、全員がウィンウィンな企画を作ります」と言っています。このパズルが、高いレベルで完成したときが朝のラジオ(伊集院光とらじおと)をやっているうえでの喜びでもあります。

 例えば、「電気代ビンゴ!」のコーナーは、「みんな電力」という会社の「毎月の検針票を大事にする習慣を広めたい」というご要望に対して検針票をビンゴカードに見立てて、電気代の下3桁と番組で出す数字が一致したら1万円になるビンゴゲームを始めました。

 「検針票を大事に!検針票をチェックしましょう!」とロングCMを流すより、ずっとずっと効果があるし、リスナーにも賞金のチャンスがある、ということで好評です。

 「ぷれぜんと」のコーナーは、今までラジオCMを打ったことがない企業にとって、企業名や商品名、店舗名がラジオで放送されたらどれくらい反応があるのか、お試しの場所にしてほしいと始めたコーナーです。モノは提供してください、費用は微々たるものでいいです。これはお試しだからと。だけど、実際そこでラジオの力が分かっていただけたら、スポンサーになってくださいっていうことで。

 最初、象印(マホービン)さんが「炎舞炊き」という炊飯ジャーの発売キャンペーン時に、ぷれぜんとを手伝ってくださいました。「炎舞炊きで極上の白飯は用意できた。さて、これに見合う瓶詰めはコレだ!」ってな企画を1クールにわたってスポンサードしていただき、高価な炎舞炊きのプレゼントも出していただき、大好評でした。さらに、「白ごはんの友」という企画自体の評判がいいのでクール終了後もコーナーとして続けていたら、次のキャンペーン期にもう1クールスポンサーになってくれたんです。こういう関係の良さは、リスナーに伝わると思っています。何のやらせもステルスマーケティングもない、楽しんで聴けて情報性の高い、堂々としたキャンペーンです。

 今後、ラジオの収入の仕組みについては、さらに変わっていくと思っています。ラジオとクラウドファンディングとか、ラジオと投げ銭(ライブ配信者などに寄付できるシステム)みたいなこととか、成功報酬制のCM契約とか、色々と出てくるんじゃないでしょうか。