「東京ゲームショウ 2020 オンライン」(TGS2020 ONLINE)の2020年9月27日午後10時からは「PUBG JAPAN Esports conference 2020」が生配信された。番組内で行われた企業チーム対抗戦は延べ6万人以上が視聴(ニコニコ生放送)。eスポーツを身近に感じてもらう取り組みとして一つの成功例を示した。

 韓国発の『PLAYERUNKNOWN‘S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)は、近年人気が広がったのバトルロイヤルゲームの一種だ。最大100人のプレーヤーが島内にある武器や防具、車両などを駆使し、最後の1人になるまで生き残りをかけて戦う。一定時間が経過すると徐々に安全に過ごせるエリアが狭くなり、他のプレーヤーに遭遇しやすくなる仕組みが設けられている。PUBGのプレーヤーたちがよく使う言葉に「ドン勝」があるが、これは最後まで生き残ったプレーヤーの画面に「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」と表示されることに由来している。

 番組の司会進行は、PUBGの日本リーグで実況を務めているOooDa氏。PUBG JAPAN室長の井上洋一郎氏、パートナー企業であるDMM GAMESの斎藤隆行氏らと共にPUBGがこれまで国内で行ってきたeスポーツへの取り組みを振り返った。

(写真左から)PUBG JAPAN 井上室長、DMM GAMES 斎藤隆行氏、総合司会のOooDa氏
(写真左から)PUBG JAPAN 井上室長、DMM GAMES 斎藤隆行氏、総合司会のOooDa氏

 DMMが主催する日本の公式リーグ「PUBG JAPAN SERIES」(以下、PJS)は、現在シーズン5まで開催され、シーズンを重ねるごとに視聴者数は増加傾向にあるという。直近のシーズン5においては、配信の総視聴者数が579万人、試合当日の同時視聴者数はおよそ3万人と盛り上がりを見せている。

 しかし、立ち上げ当初のハードルは高かったと井上氏は話す。「PJSを開催する以前は、1対1の格闘ゲームや5対5で戦うFPS(First Person Shooter、一人称視点のシューティングゲーム)などが主だった。PUBGは100人で行うゲームなので、eスポーツの大会は『できるわけがない』と言われていた」(井上氏)。

 そんな中、国内でのPUBGを使ったeスポーツシーンづくりに手を挙げたのがDMM GAMESだ。「最初は(PUBGを)DMMプラットフォームで販売させてほしいというところから入った。グローバルではやっているゲームということもあり、eスポーツをやるからには日本から強い選手を輩出したいという思いで(協業を)お願いした」(斎藤氏)。

DMM GAMESが主催する「PUBG JAPAN SERIES」は、韓国PUBGより正式に認可されている唯一の日本リーグである
DMM GAMESが主催する「PUBG JAPAN SERIES」は、韓国PUBGより正式に認可されている唯一の日本リーグである

協賛企業の商品や特性を生かした施策を展開

 YouTubeをはじめとする実況動画の普及もあって、PUBGは見ているだけでも楽しめるバトロワゲームとして定着しつつある。PJSの視聴者の中には、家族で食事を取りながら観戦することを楽しみにしている人もいる、とMCのOooDa氏。PJSではそうしたロイヤルティーの高い視聴者に向けて、協賛企業の商品や特色を生かした企画にも力を入れている。

 例えば、シーズン5で協賛企業となった日本ケンタッキー・フライド・チキンとの施策。試合終了後のちょうど小腹がすく時間帯を狙って、出演者がケンタッキーのチキンを食べる時間を設けたり、解説時の画面上に広告を掲載したりしている。お決まりのフレーズ「勝った!勝った!夕飯はドン勝だ!!」の英語版が「WINNER WINNER CHICKEN DINNER!!」であることから、そもそもチキンとPUBGは相性が良いのだという。

試合後に協賛企業であるサッポロビールの商品で乾杯し、選手とともに試合を振り返るコーナーも(資料右)
試合後に協賛企業であるサッポロビールの商品で乾杯し、選手とともに試合を振り返るコーナーも(資料右)

 シーズン中に毎回こうしたコーナーを設けていると、「視聴者がケンタッキーを買って食べている様子をTwitterにアップしてくれる」(斎藤氏)こともあるという。視聴者と出演者が一体となって楽しむ企画にすることで協賛企業のPR効果を高めているようだ。

 さらに、20年8月にはモバイル版アプリ『PUBG MOBILE』のeスポーツ大会「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE SEASON 0」(以下、PMJL)が始まった。事実上『PUBG MOBILE』の日本一を決める大会で、優勝チームは世界大会への出場権を獲得できる。賞金総額は1000万円。『PUBG MOBILE』の国内大会史上最多となる400チーム以上が参加しており、9月26日からセミファイナルが開催されている。

 PMJLを主催するNTTドコモには、19年の東京ゲームショウで同社の5G試作端末を使いPUBGの企業対抗戦などを実施した経緯がある。番組にVTRで出演したNTTドコモ eスポーツビジネス推進担当部長の吉田裕之氏は、当時の出展内容について「当社の5Gが高度化するモバイルゲームやeスポーツに必要な要件を満たしていけるのか、その可能性を実証したくPUBGにご協力いただいた」と背景を語った。さらに、PUBGの魅力として、見るだけでも楽しめるゲームであること、トッププレーヤーからライトユーザーまでプレーヤー層が厚いこと、SNSでのコミュニケーションが活発なことなどを挙げた。

ゲーム内のロゴ掲載をかけた企業対抗戦

 番組の後半には、TGSでの生放送を記念したカスタムマッチが開催された。このカスタムマッチが始まるやいなや、各種公式チャンネルの視聴者数が上昇。プロの大会とはひと味違う、「見ているだけ」に加え「実況を聞いているだけ」でも面白い試合だったので、少しだけ内容を紹介したい。

 カスタムマッチを戦うのは、抽選で選ばれた20社の「企業」チームだ。優勝チームは番組中に自社PRの時間が与えられる上、PUBGのゲーム内に設置された看板に企業ロゴを掲載することができる。広告事業を手がけるADKグループは、参加にあたって「看板を『出す』のが広告会社ですが、たまには看板を『出される』側になってみようと思います」とコメント。「社内最強メンバーをそろえた」というセガサミーグループのハイブクリエーションや、事前に社内で予選を行ったというNTT西日本など、どの企業もかなり力が入っていた。

自社のスマートフォン「ROG Phone」を使ってカスタムマッチに参戦したというASUS JAPANチーム。試合中はクローズアップされた選手の所属企業について、OooDa氏が事業内容などを紹介した
自社のスマートフォン「ROG Phone」を使ってカスタムマッチに参戦したというASUS JAPANチーム。試合中はクローズアップされた選手の所属企業について、OooDa氏が事業内容などを紹介した
PUBGのリーグで実況を務めている岸大河氏(左)とYamatoN氏(右)がカスタムマッチでも実況を担当した
PUBGのリーグで実況を務めている岸大河氏(左)とYamatoN氏(右)がカスタムマッチでも実況を担当した

 ASUS JAPANとサムスン電子ジャパンが自社のモバイル端末を使って参戦していることから、「ぜひ(両社の対戦が)見たいですね。どちらが端末として優秀なのか」と各社の事業に合わせた実況が始まると、視聴者からも「ROG VS Galaxyは熱い」「(自分は)ヤマハを応援する」といったコメントが増え、実況・コメント欄ともに企業名や商品名が飛び交い続けた。

試合中は、適宜マップやチームの戦況が画面に表示された。各社の残りメンバー数、位置取りなどが視聴者にも把握できる
試合中は、適宜マップやチームの戦況が画面に表示された。各社の残りメンバー数、位置取りなどが視聴者にも把握できる

 エリアが狭まってくる後半戦は、相手より先に戦いやすい場所を確保することが重要になってくる。位置取りで優勢になったシーフォースチームに対し、「先が見えてますね、この会社」と実況がもり立てる一幕も。

 最後は撃ち合いを制したエルバーククオリティチームが「ドン勝」で試合終了。チームのメンバーは「ドン勝できたらボーナスを」と社長に伝えていたようで、OooDa氏が「ボーナスは実現しそうですか?」と質問すると「事前にお願いはしてきましたので……」とささやかな期待を寄せた。実際にボーナスが支払われるかは別として、多くの視聴者に自社をアピールできたことは間違いない。

 9月26日に配信された主催者番組「2020年版 eスポーツの楽しみ方」の中で、レノボ・ジャパンのデビット・ベネット氏が「eスポーツの企業リーグをつくりたい」と話していたが、このカスタムマッチでいかに企業対抗戦がeスポーツ観戦の入り口にふさわしいか、実感した視聴者も多かったのではないだろうか(関連記事「eスポーツはコロナ禍で失われるコミュニケーションの懸け橋に【TGS2020】」)。PUBGはアマチュアや社会人を対象とした企業リーグ「AFTER 6 LEAGUE」にも参加しており、エントリー期間は9月30日まで。今回の試合で熱い気持ちになった方は、ぜひ挑戦してみてはいかがだろう。

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